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- 国:日本 - 地域:京都府京都市(座標は左京区・岡崎周辺に相当) - 気候・地形:盆地。夏は35℃前後まで上がり湿度が高い。冬は底冷えが強く、積雪も年数回ある。三方を山に囲まれ、北から鴨川・高野川が流れ込む。 - 暮らしの基本:上下水道・ガス・電気完備の都市生活。古い町家と戦後の建売住宅・マンションが混在する。スーパー・コンビニが徒歩圏にある密集市街地。老齢化が進む地域と、学生・若いファミリー層が混在する。 ---
疏水の手前、細い路地に入る。コンクリートに苔が貼りついている。排水溝のふたが一枚、微妙にずれていて、踏むたびに金属音を立てる。空は白い。午後遅い時間帯の光量だが、雲が厚いせいで影がない。 電柱に、手書きの貼り紙が一枚。「ねこ注意」と書いてある。字が崩れている。 路地の突き当たり、築40年ほどに見える二階建ての戸建てがある。外壁はモルタル、角が欠けている。玄関先に長靴が一足、横倒しのまま置かれている。植木鉢が三つ。土が乾ききっている。 呼び鈴を押す前に、引き戸が開く。 74歳の山崎和子さんが顔を出す。エプロンをしている。紺地に白い細縞。孫娘が今朝から来ていて、夕飯を一緒に食べるところだ、と言う。聞き取れない部分がある。関西のイントネーションで、語尾が早い。 玄関に入る。たたきのタイルは白と灰色の市松。靴を脱ぐ場所が狭く、右足をかかとから抜いてから左足を抜く順番になる。廊下は畳ではなく、板張り。踏むとわずかにたわむ。 台所は廊下の突き当たり。三畳ほどの広さ。IHコンロが二口。レンジフードのファンが回っている音がずっとしている。換気扇の音というより、モーターが少し振動している音。手元の蛍光灯が一本、明滅している。 冷蔵庫の側面に、マグネットが六個張りついている。歯科医院のカレンダー、宅配便の不在票が一枚、セロハンテープで留めてある。 流しの脇に、昆布が一枚、広げてある。乾いた昆布。茶色ではなく緑がかった黒。水が少し張った鍋の中に沈んでいるものも別に一本ある。 和子さんが鍋の蓋を取る。湯気が天井に向かって一直線に上がってから、折れる。匂いはまだ薄い。出汁の香りというより、水が蒸発しているだけの匂い。 孫娘の声がする。八畳の居間から。テレビの音も聞こえる。天気予報の声。明日の降水確率が出ているらしい。 和子さんが小鍋をもう一つ火にかける。中に、白い塊が沈んでいる。豆腐。絹か木綿か、この距離ではわからない。鍋の縁が少しずつ動き始める。対流が起きている。 棚の上に、小さな白い陶器の器が並んでいる。蓋つきのもの、蓋のないもの。同じシリーズではなく、それぞれ別の場所から来ている印象がある。 台所の床に、段ボール箱が一つ。中に玉ねぎが三個と、里芋が四つ入っている。里芋の皮に泥がついたまま。 鍋がふつふつと音を立て始める。小さな泡が縁から出てくる。和子さんが火を弱める。右手でお玉を持ち、左手で鍋の縁を押さえる。押さえている指の先が、鍋の熱で少し赤くなっている。 居間の方から、孫娘が呼ぶ声がする。聞き取れない。和子さんが短く返事をする。一音節か二音節。 鍋から湯気が上がり続けている。昆布の匂いがようやく台所に出てきた。それに混じって、別の何かの匂いもある。醤油ではない。もう少し穏やかなもの。 食卓は居間の真ん中にある。折り畳み式ではなく、据え置きの木製テーブル。椅子が三脚。孫娘がすでに座っていて、スマートフォンを裏返しにしてテーブルの上に置く。 和子さんが台所から二往復して、椀と小皿を運ぶ。椀の蓋から湯気が一筋出ている。小皿には、薄い色の汁に沈んだ固形物がある。白と薄緑と、だいだい色に近い何か。 もう一品が並ぶ。深い皿。汁が多い。 和子さんが座る。エプロンを外す。膝に置く。 孫娘が箸を取る。 「いただきます」の声が、ほぼ同時に二人から出る。 ---
今日のふらりごはん

料理名

炊いたん(京都家庭の根菜炊き合わせ)/ 炊き合わせ

この料理について

「炊いたん」は「炊いたもの」を意味する京都の日常語で、野菜や豆腐・油揚げをだしで炊いた煮物の総称。料亭の盛り付けとは別に、家庭では毎日の惣菜として冷蔵庫の残り野菜で作られる。素材ごとに別炊きにする家と、一鍋で炊く家がある。


材料(2〜3人分)

食材分量日本での入手備考
里芋4〜5個(約300g)全国スーパー秋〜冬が旬。なければじゃがいも(食感が変わる)
木綿豆腐1丁(300g)全国スーパー絹でも可だが崩れやすい
油揚げ1枚全国スーパー薄揚げ。京都では「あぶらげ」と呼ぶことが多い
昆布だし400ml昆布を水から30分浸出顆粒だし代用可だが旨味の輪郭が変わる
かつおだし200mlスーパーのパック出汁でも可昆布だしと合わせて使う
薄口醤油大さじ2全国スーパー濃口醤油を使うと色が濃くなり風味も変わる。薄口必須
みりん大さじ1.5全国スーパー本みりん推奨
砂糖小さじ1全国スーパーひかえめに
少々味を決める最後の調整

アレルゲン:大豆(豆腐・油揚げ)、小麦(醤油に含まれる場合あり)


ソース照合メモ

要素現地語ソース(日本語)英語ソース判定
昆布だしを使う洛市レシピ、京料理サイト複数で言及Japanese cooking 101等で「kombu dashi」として共通記載◎必須
薄口醤油(淡口醤油)で色を薄く仕上げるクックパッド京都カテゴリ・日本語サイト全般で強調英語圏レシピでも「light soy sauce」として明記されるケースあり◎必須
里芋・豆腐・油揚げの組み合わせ日本語サイト複数で頻出英語ソースでは「taro, tofu, aburaage」で確認◎必須
素材を別鍋で炊く日本語の丁寧な調理解説サイトで言及英語ソースでは省略されることが多い地域固有・推奨
だしの昆布を水から引く日本語ソース複数で強調英語ソースでは「dashi stock」で省略されることあり◎必須

この料理を成立させる核

  • 昆布+かつおの合わせだし:これがなければ別の料理になる。顆粒だしは代用できるが、素材の繊細さが失われる
  • 薄口醤油:色を素材の白や薄緑に残すために必須。濃口に替えると「炊いたん」ではなく「煮物」の印象になる
  • 里芋のぬめり:里芋は下茹でまたは塩もみしてぬめりをとってから炊く。ぬめりを残すかどうかで食感の好みが分かれるが、だしを濁らせないために一度洗う工程は家庭でも多くの場合行われる
  • 煮すぎない:沸騰を維持しない。ふつふつする程度の弱火でゆっくり含め煮にする。これを「炊く」と表現し、「煮る」とは言い分ける感覚が京都の家庭調理にある

作り方

  1. だしを引く:水400mlに昆布1枚(5×10cm程度)を30分〜1時間浸ける。弱火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す。そこにかつお節ひとつかみ(約10g)を入れ、1分おいてからこす。これで合わせだし約500〜550mlができる。
  2. 里芋を下処理する:里芋は皮をむき、一口大に切る。塩少々をまぶして手でもみ、ぬめりを出す。水でよく洗い流す。鍋に水と里芋を入れ、中火で4〜5分下茹でする。水を切る。
  3. 油揚げを下処理する:油揚げに熱湯をかけて油抜きをする。2〜3cm幅に切る。
  4. 豆腐を切る:木綿豆腐は4〜6等分に切る。キッチンペーパーで軽く水気をおさえる。
  5. 炊く:鍋に合わせだし、薄口醤油大さじ2、みりん大さじ1.5、砂糖小さじ1を入れ、中火にかける。里芋を加え、ふつふつする程度の弱火〜中弱火で10分炊く。油揚げを加えてさらに5分。豆腐を崩さないように加え、さらに5〜8分。塩で味を調える。
  6. 含め煮にする:火を止め、そのまま10〜15分おく。だしが素材に入り込む時間。食べる直前に弱火で再度温める。

食べ方

椀や深皿によそい、汁ごと食べる。ご飯・味噌汁・漬物と並べる。一汁三菜の「菜」の一品として出す家が多い。翌日は味がしみて別の食感になる。


補足

  • 失敗しやすいポイント:強火で煮ると豆腐が崩れ、里芋がだしを濁らせる。沸騰させないことが最重要。
  • 薄口醤油がない場合:濃口醤油を半量にして塩を足すことで色を薄くできるが、風味は変わる。薄口醤油はKALDI・業務スーパーで入手可能。
  • 顆粒だし代用時:昆布だし顆粒+かつおだし顆粒を1:1で使う。塩分量が増えるため醤油を大さじ1.5に減らして調整する。
  • 時短バージョン:里芋を冷凍里芋(下処理済み)に替えると、下茹で工程を省ける。食感はやや水っぽくなる。
  • 翌日の楽しみ方:だしが抜けてくるため、少量のだしと薄口醤油を足して温め直す。または冷たいまま食べる家庭もある。冷やすと豆腐の食感が変わり、だしを吸って別の味わいになる。
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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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