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- 国:グリーンランド(デンマーク自治領) - 地域:東グリーンランド内陸氷床縁辺部(無人地帯から漂着) - 気候・地形:氷床が国土の80%以上を覆う。沿岸部にのみ人が居住。夏でも気温は数度、冬は-30℃以下。永久凍土の上に薄い植生。日照は季節によって極端に偏る。 - 暮らしの基本:人口5万7千人ほどのほとんどがカラーリット(グリーンランド先住民)または混血系。狩猟・漁労が食文化の根幹。輸入食品は高価で、アザラシ・トナカイ・魚が日常食の主軸。家屋は断熱性の高いコンクリートまたはプレハブ構造が多い。 ---
あなたは氷から流れ着いた。 岸に引き上げられたのは午後の、陽が低い時間だった。太陽は地平線に張りついたまま動かない。空は白く濁り、海は鉛色をしている。砂と砂利の混じった浜が、波打ち際から急角度で集落に向かって立ち上がっている。 集落は十数棟のカラフルな木造とコンクリートの箱が、低い丘の斜面に張りついたように並んでいる。赤、青、黄。塗料の剥げた角が、風に削られた断面を見せている。舗装はない。地面は凍っていないが固く、靴の下でじゃりと鳴る。 男が一人、浜から見ていた。 四十代くらい。黒髪。防水ジャケットの前を開けたまま、腕を組んでいた。あなたが近づくと、男は何か言った。グリーンランド語だった。聞き取れなかった。男はもう一度言ってから、顎で丘の上を示した。 男の名はアルナルスアクというらしかった。漁師だと後でわかった。妻と子ども二人。家は丘の中腹の、黄色に塗られた二階建てだった。 玄関を入ると、厚いゴムのマットの上に長靴が六足ある。壁には防寒着がかかっている。奥からテレビの音。デンマーク語のニュースが流れていた。 台所は狭い。シンクの横に魚の切り身が乗ったプラスチックのトレーが置いてある。白い肉。皮がついたまま切られている。鱈だった。スチール製の鍋が一つ、コンロの上にある。コンロは電気式。表面に茶色い焦げ跡がついている。 アルナルスアクの妻――三十代、髪を後ろで縛っている――が鍋の蓋を開けた。白い湯気が天井に向かった。鍋の中で何かが沸いている。音は静かだが、ぐつぐつという低い振動が台所の床から足裏に伝わる。 窓の外で何かが倒れた。 妻が窓を見た。また立てる音。アルナルスアクが舌打ちをして玄関に向かった。戻ってきたとき、彼は犬のリードを持っていた。グレーと白の混じった中型犬が、廊下でぱたぱたと尾を振っている。犬はそのまま居間に消えた。 テーブルは白いクロスがかかっている。四人分の皿が並んでいる。陶器の深皿。端が少し欠けているものがある。子どもたちが椅子を引く音。上の子は十歳くらいで、下の子はまだ幼児椅子に座る年齢だった。 妻が鍋を持ってテーブルに来た。 深皿に白い液体がゆっくり注がれる。浮いている固形物。白い肉の塊。崩れかけた状態で、スプーンで触れると繊維がほぐれる。上にケチャップのような赤いソースが線を引くように垂らされた。妻がマスタードの瓶をテーブルの中央に置く。黄色い蓋。デンマーク語のラベル。 白いパンが切られていないまま一斤、テーブルに出てきた。アルナルスアクがナイフで切り始めた。犬が居間から廊下に戻ってきて、台所の入り口に座った。 妻が「Tak」と言った。 アルナルスアクが子どもたちに何か言った。上の子がスプーンを持った。下の子が皿を見ている。 あなたの前にも深皿がある。湯気が顔に当たる。匂いは淡い。魚の匂い、それから何か乳製品に似た何かが混じっている。スプーンが手の中にある。 全員が揃って、スプーンを皿に傾けた。 ---
今日のふらりごはん

料理名

Kogt torsk med sennepssovs / ゆで鱈のマスタードソースがけ

この料理について

グリーンランドの沿岸部で日常的に食べられる家庭料理。デンマーク統治の影響でマスタードソースが定着しており、鱈はグリーンランド沿岸で最も手に入りやすい魚のひとつ。祝祭とは無関係の、週に何度も出てくる平日の一皿。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
鱈(切り身、皮つき)600gスーパー全般生でも冷凍解凍でも可。タラの切り身として市販のもの
適量ゆで水に加える
月桂樹の葉1枚スーパー、KALDIなければ省略可
黒胡椒(粒)5粒スーパー全般ゆで水用
【マスタードソース】バター大さじ2スーパー全般有塩でも可
薄力粉大さじ2
魚のゆで汁200ml鱈をゆでた後の汁を使う
牛乳100ml
粒マスタード大さじ2〜3スーパー全般ディジョンマスタードでも可
塩・白胡椒各少々味を整える
ケチャップ適量(仕上げ)卓上で各自が加える

アレルゲン:魚(鱈)、乳製品(バター・牛乳)、小麦(薄力粉)、マスタード


ソース照合メモ

食材・要素現地語ソース(デンマーク語含む)英語ソース日本語ソース判定
鱈(torsk)Travel by Stove(デンマーク語レシピから翻訳)に明記Travel by Stove #3 に記載必須
マスタードソース"Boiled Cod with Mustard Sauce" として複数言及#3 Travel by Stove に明記必須
ゆで汁をソースに使うTravel by Stove("Reserve 1/3 cup of the boiling water for the sauce")#3 に明記必須・核心
じゃがいも茹で汁混用"potato water" とある(ソース用の液体に混用)#3 に記載オプション(じゃが芋を別に茹でている家庭で発生する)
ケチャップ(卓上)現地の家庭写真で頻出複数の旅行記で言及地域固有・卓上使用
バター+小麦粉ルー北欧全般のマスタードソースの基本英語ソース全般必須
アザラシ・鯨・トナカイ#1 #2 #5 に明記(suaasat系)複数に明記別料理(suaasat)の材料

この料理を成立させる核

  • 鱈はゆでること。焼かない。蒸さない
  • ソースに鱈のゆで汁を使うこと。これが風味の軸になる。水や市販のブイヨンでは別物になる
  • マスタードは加熱後に加える。ルーに最初から入れると風味が飛ぶ
  • ソースはバターと小麦粉のルーベースであること(北欧式ベシャメル構造)

作り方

  1. 鱈の切り身に軽く塩をふり、10分置く。出てきた水分をペーパーで拭く。
  2. 鍋に水を張り、塩少々・月桂樹の葉・粒黒胡椒を入れて沸かす。沸騰したら弱火にし、鱈を入れる。
  3. 鱈を8〜10分ほど静かにゆでる(ぐつぐつさせない。身が崩れる)。火が通ったら取り出し、皿に移して蓋かラップで保温する。
  4. ゆで汁を200mlすくって取り置く(これが重要)。
  5. 別の小鍋にバターを入れ、中火で溶かす。薄力粉を加え、木べらで絶えず混ぜながら1〜2分炒める(焦がさない)。
  6. ゆで汁を少量ずつ加えながら、都度よく混ぜる。全量加えたら牛乳を加え、さらに混ぜる。弱火にして、とろみが出るまで5分ほど加熱する。
  7. 火を止めてから粒マスタードを加え、混ぜる。塩・白胡椒で味を整える。
  8. 保温しておいた鱈を深皿に盛り、ソースをかける。卓上にケチャップを置いて各自でかける。

食べ方

白いパン(またはゆでたじゃがいも)と一緒に食べる。ソースをパンで拭い取るのが家庭での食べ方。マスタードソースはたっぷりめにかける。ケチャップは子どもが特に好んで使う。


補足

  • 失敗しやすいポイント:ゆで汁を捨ててしまうと、ソースが魚の旨みのない薄い白いソースになる。必ず取り置くこと
  • 代用提案:粒マスタードの代わりにディジョンマスタードを使うと、辛みが増してざらつきがなくなる(風味差:やや鋭くなる)。粒の食感が好みの場合は粒マスタード推奨
  • 時短バージョン:電子レンジで鱈に蒸し調理(600Wで4〜5分)→ 市販の白ソース(ベシャメル)にマスタードを混ぜるだけで10分以内に作れる。ゆで汁が出ないため旨みは落ちる
  • 翌日の楽しみ方:ソースに残りの鱈をほぐして入れ、パスタや温めたパンにかけて食べる。ソース自体は翌日まで冷蔵保存可

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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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