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- 国:アメリカ合衆国(ネバダ州) - 地域:ウォッショー郡北部、ブラックロック砂漠の西縁に近い高原地帯。リノ市街地から北東へ約80キロ - 気候・地形:グレートベースン砂漠の半乾燥高原。標高1300〜1500メートル帯。夏は日差しが強く昼夜の寒暖差が大きい。冬は降雪あり。年間降水量は少ない - 暮らしの基本:牧場・採掘業・農業が混在する疎らな集落。チェーンスーパーまでの距離が遠く、冷凍・缶詰の備蓄が家庭の標準。バスク系移民の子孫が一定数暮らす地域として知られる ---
砂利道は舗装が途切れたところから始まる。タイヤが踏むたびにかすかな粉が上がる。右手のフェンスは金属の細線で、何かを囲っているのか、囲われていないのか判断できない。空が広すぎる。地平線まで同じ色の低木が続いていて、遠近感がおかしい。 トラックが止まる。あなたはドアの外に出る。空気が乾いていて、鼻の粘膜がすぐに感じる。日差しは真上から来ていて、影が足元に小さく落ちている。温度計は持っていないが、アスファルトの端が白く焼けている。 ガソリンスタンド兼小さな食料品店の前に、シボレーのピックアップが一台。ドアに文字が書いてあるがかすれている。店の中に入る。冷蔵ケースのモーター音が大きい。棚にはトルティーヤチップス、缶詰のビーンズ、グレービーの素、クラッカーが並んでいる。カウンターの後ろに六十代くらいの男がいる。チェック柄のフランネルシャツ、顎に白い無精ひげ。 彼の名前はダレル・ハモンド。かつてリン鉱石の採掘会社で機械整備をしていた。今は妻のヘレンと二人でこの店を週に三日だけ開けている。息子は二人いるがどちらもリノに出た。 あなたが地図を広げていると、ダレルが「どこまで行く?」と聞く。あなたが答えると、彼はしばらく黙って、「今夜は戻れないだろう。道が北で一本になる」と言う。 そのとき店のドアが開いて、十代の少女が入ってくる。ダレルの孫だった。エマという名前。金曜日から週末を祖父母の家で過ごすのが習慣らしい。ドアを開けたまま何かを叫ぶと、外から「わかった」という声が返ってくる。声の主はトラックの中にいた母親で、すぐに走り去る。 「夕飯、食べて行きなさい」とダレルが言う。文にならない感じで、確認でも質問でもない。エマがすでにあなたの方を向いて「来て」と言っている。 道を百メートルほど戻った場所に家がある。木造の平屋。ペンキが褪せた白。玄関の横にプロパンガスのタンクが立っている。デッキにプラスチックの椅子が二脚、畳まれたまま立てかけてある。 中に入ると、ヘレンが台所にいる。六十代、グレーのスウェットシャツ、髪を後ろでまとめている。コンロの前に立っていて、振り返らない。鋳鉄のダッチオーブンが大きなバーナーの上にある。蓋からわずかに蒸気が出ている。 居間は天井が低い。ソファにアフガン毛布が掛けてある。テレビは大きい。隅に犬のベッドがあるが犬がいない。「グスが出て行った」とエマが何かを説明しようとするが、途中でやめる。 台所の窓の外に空が見える。雲が出てきていて、光が変わった。 ヘレンが鍋の蓋を取る。湯気が一気に上がる。牛肉の脂の匂い、それにトマトと、もっと土っぽい何か。茶色がかった赤い汁が見える。根菜の角切りが沈んでいる。肉の繊維がほぐれている。 「座って」とヘレンが言う。 テーブルはフォルミカ張りで、縁がアルミのモールで覆われている。椅子は四脚、全部違うデザイン。エマがパンの袋を棚から引っ張り出す。スライスされた白いパン。ダレルがコーヒーポットを持ってくる。 ヘレンが深皿を運んでくる。一杯ずつ。あなたの前に置かれた皿の中に、その茶色い汁と、底に沈んだ塊が見える。湯気が立っている。匂いは濃い。スプーンが添えられる。 ヘレンが戻ってきて、自分の椅子に座る。エマがパンを一枚千切って皿の横に置く。ダレルが両手を膝の上に置く。 誰も何も言わない。数秒。 それから、スプーンが動く。 ---
今日のふらりごはん

バスク風ビーフシチュー

Estofado vasco / バスク風ビーフシチュー

この料理について

ネバダ州北部・西部の高原地帯には、19世紀末からバスク地方(スペイン・フランス国境の山岳地帯)出身の羊飼いが入植した歴史がある。彼らの子孫が今も暮らすウォッショー郡周辺では、バスク系の煮込み料理が家庭の日常食として根付いている。特別な行事食ではなく、週の半ばに大鍋で作っておく平日の食事として位置付けられている。

材料(4〜5人分)

食材分量日本での入手備考
牛肩ロース(角切り4cm角)800gスーパー精肉コーナーチャックロールでも可
玉ねぎ2個(大)スーパー粗みじん切り
にんにく4〜5片スーパー潰す
セロリ2本スーパー2cm幅切り
にんじん3本スーパー大きめの乱切り
じゃがいも(メークインまたはYukon Gold種)4個(中)スーパー皮付きのまま4等分
トマト缶(ホールまたはダイス)400g缶 1缶スーパー
牛骨だしまたはビーフブロス480ml(2カップ)業務スーパー・Amazon缶・パック可
赤ワイン240ml(1カップ)スーパー飲めるもの、甘口でなければ何でも可
トマトペースト大さじ2スーパー・KALDI
パプリカパウダー(スモーク)大さじ1KALDI・富澤商店・Amazonバスク料理の要。通常パプリカで代用可だが風味は変わる
乾燥オレガノ小さじ1スーパー
乾燥タイム小さじ1スーパー
ローリエ2枚スーパー
適量
黒こしょう適量
植物油(またはラード)大さじ2〜3スーパーラードの方が風味が出る
小麦粉大さじ3スーパー肉にまぶす用

アレルゲン:小麦(小麦粉)、セロリ(一部アレルギー該当)。赤ワインにも亜硫酸塩含有のものが多い。

ソース照合メモ

食材現地語ソース(スペイン語/バスク語)英語ソース日本語ソース判定
牛肉(肩・すね等)必須(estofado, pucheroの基本)Basque beef stew recipe 複数に記載ネバダ州バスク食文化の記事に言及必須
玉ねぎ・にんにく全バスク煮込みに共通共通共通必須
スモークパプリカpimentón ahumado として頻出smoked paprika として強調必須(核)
赤ワインvino tinto として必須必須として記載必須
トマト・トマト缶基本材料基本材料必須
じゃがいも一部ソースで根菜として登場多数ソースに記載必須(ネバダ家庭版の特徴)
トマトペースト一部ソースのみ一部ソースに記載オプション(深み出しに有効)
セロリ一部複数オプション(あると香りが出る)

この料理を成立させる核

  • スモークパプリカ(pimentón ahumado)を省かない。これがバスク系煮込みと一般的なアメリカのビーフシチューを分かつ最大の要素。通常のパプリカで代用した場合、スモーク感がなくなり別の料理になる
  • 赤ワインで肉を煮込む。ビーフブロスだけで作ると風味が平板になる
  • 肉に小麦粉をまぶしてから焼き付ける。この工程が煮汁にとろみを与える。省くとさらさらのスープになる
  • 焼き付けは省かない。肉の表面をしっかり焼いてから煮込む。この焦げがシチュー全体の色と深みの基盤になる
  • 根菜は大きめに切る。崩れて消えるのではなく、食べごたえのある塊として存在する

作り方

  1. 牛肉に塩・黒こしょうをまぶし、小麦粉を全面に薄くはたく
  2. ダッチオーブン(または厚手の鍋)を中強火で熱し、油を引く。牛肉を重ならないようにバッチに分けて入れ、全面に焦げ色がつくまで焼く(1バッチ4〜5分)。肉を取り出す
  3. 同じ鍋に玉ねぎ・セロリを加え、中火で5〜7分炒める。焦げ付いた肉の旨みを木べらでこそぎながら炒める
  4. にんにくを加えてさらに1分。トマトペーストを加えてさらに1〜2分、鍋底に薄く焦がすように炒める
  5. 赤ワインを加え、鍋底をこそぎながら2〜3分煮立てる(アルコールを飛ばす)
  6. 牛肉を戻し入れる。トマト缶、ビーフブロス、スモークパプリカ、オレガノ、タイム、ローリエを加える
  7. 強火で一度沸かし、アクを取る。弱火にして蓋をし、1時間〜1時間30分煮込む(肉がフォークで崩れる手前まで)
  8. にんじん・じゃがいもを加え、再び蓋をして30〜40分煮る(じゃがいもが柔らかくなるまで)
  9. ローリエを取り出す。塩・黒こしょうで味を整える。必要であれば蓋を外して弱火で5〜10分煮詰め、とろみを調整する

食べ方

深めの皿に盛り、スライスしたパン(白パン・バゲット・クラッカー)を添える。スープを皿に残さずパンで拭き取るのがこの地域の家庭での食べ方。テーブルには塩とコショウだけを置く。コーヒーと一緒に出されることが多い。

補足

  • 失敗しやすいポイント:じゃがいもを最初から入れると煮崩れて泥状になる。必ず肉が柔らかくなってから加えること
  • スモークパプリカの代用:通常パプリカ大さじ1+液体スモーク(Amazon・KALDI)数滴で近づけられる。液体スモークがなければ通常パプリカのみでも成立するが、風味は明確に変わる
  • 時短バージョン:圧力鍋使用で工程7の煮込みを25〜30分に短縮可。食感は柔らかくなりすぎる場合があるため、じゃがいも・にんじんは圧力後に加えて普通に10〜15分煮ること
  • 翌日の楽しみ方:冷蔵庫で一晩置くと脂が固まり取り除きやすい。再加熱すると味が締まる。残りに缶詰のビーンズ(白インゲン豆)を加えると別の一品になる
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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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