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- 国:ドイツ連邦共和国 - 地域:ニーダーザクセン州、ハノーファー地域圏に属する中規模の町、ブルクドルフ(Burgdorf)。ハノーファー市街から北東約25キロ。 - 気候・地形:北ドイツ平原の一角。起伏は少なく、農地と森が交互に続く。夏は涼しく冬は曇天が多い海洋性気候。年間を通じて霧と雨が多い。 - 暮らしの基本:農業と小規模製造業が混在する町。住宅は赤煉瓦と木骨造りが多く、庭付きの一軒家か2〜3階建ての集合住宅。鉄道でハノーファーへ通勤する住民が目立つ。週末に菜園(クラインガルテン)を持つ家庭も珍しくない。 ---
10月の午後4時。空は白く、地面は乾いているが土の匂いがある。 あなたはブルクドルフの住宅地の中を歩いている。舗装は古く、コンクリートの継ぎ目に苔が詰まっている。左右に赤煉瓦の家が並ぶ。庭はそれぞれ金属の柵で区切られ、黄色くなったリンゴの木が一本、枯れた花壇の横に立っている。誰も出てこない。犬の声だけが聞こえる。遠い。 自転車置き場に鍵のかかっていない自転車が2台。玄関ドアは濃緑で、ガラスが入っている。その向こうに、誰かが立っているのが見える。 あなたは地図を見ながら立ち止まる。 「どこを探してるの?」 振り返ると、雨合羽を着た女が段差の上に立っている。60代半ばくらい。手に買い物袋を2つ。白髪が耳の後ろに入っている。クラウスマルクト方面のことを話す前に、彼女は「ちょうど向こうから来たから」と言って歩き始める。あなたはついていく。 2ブロック歩いたところで彼女は「ここよ」と言って、格子模様のエプロンをつけたまま鍵を開ける。廊下に自転車のタイヤ用のポンプが立てかけてある。床にプラスチックのマットが敷いてある。犬の匂いではなく、ストーブと古い木の匂い。 「入って。もうすぐ息子も帰ってくる」 台所は廊下のつきあたりにある。天井が低い。冷蔵庫は白く、側面に子どもの絵がマグネットで貼ってある。孫だろうか。引き出しには布巾が引っかかっている。コンロは4口、鉄鍋が一つかかっている。鍋の底から、くぐもった沸騰音がすでに始まっている。 彼女はコートを脱がずに蓋を持ち上げる。白い湯気が一気に上がる。肉の脂の匂いが混じる。 「ハンナです。座って」 木のテーブルはキッチンの中央にある。椅子は4脚で、うち1脚の背もたれに布が被せてある。テーブルクロスはない。プラスチックのランチョンマットが3枚、すでに出ている。 電気が落ちる。 コンロの赤い火だけが残る。台所が一瞬、暗橙色になる。 「またか」ハンナは舌打ちをして、引き出しを開ける。懐中電灯のスイッチを入れる。天井の蛍光灯がまた点く。10秒もかからない。 「この通りはよくあるの。古いから」 彼女は大きな鍋をコンロから降ろし、ラードの塊を小鍋に入れる。玉ねぎを包丁の腹でつぶしてから刻む。切り口から水分が出る。音が始まる。鋭く、すぐ落ち着く。 玄関のドアが開く音。重い靴音。 「マルティン。ちょっと手を洗って」 40代の男がジャケットのまま台所を通り過ぎる。目が合う。軽くうなずく。コンロの音が低くなる。 ハンナが鍋から取り出したものを厚い皿に盛り始める。グレーがかった塊と、崩れかけた茶色の物体。汁が皿の端に溜まる。脂の光沢。灰色がかった緑のものが添えられる。 マルティンが戻ってきてテーブルに着く。ハンナが深皿を置く。湯気が顔の高さまで上がる。鍋の金属の匂いと、煮詰まった肉汁の重さが、低い天井に溜まっている。 ハンナは椅子を引いて座り、布巾をひざに広げる。 「さあ、食べましょ」 ---
今日のふらりごはん

料理名

Eisbein mit Erbspüree / アイスバイン、豆のピューレ添え

この料理について

アイスバインはニーダーザクセンを含む北ドイツ各地で日常的に食卓に上がる塩漬け豚のすね肉料理で、祝い事ではなく普通の平日に煮込まれる。乾燥エンドウ豆を使ったピューレ(Erbspüree)との組み合わせが北ドイツでは定番で、南ドイツのザワークラウト添えとは一線を画す。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
塩漬け豚すね肉(Eisbein/Schweinshaxe)2本(計1〜1.2kg)業務スーパー・ハラール系肉屋塩漬け済みのものを使う。なければ生の豚すね肉を使い、塩水(水1L・塩80g)に一晩漬ける
玉ねぎ2個スーパー1個は丸ごと、1個は刻む
ローリエ3枚スーパー・KALDI
黒コショウ(粒)小さじ1スーパー
オールスパイス(粒)5粒KALDI・富澤商店なければ省いても可だが香りが変わる
クローブ3本KALDI・富澤商店玉ねぎに刺して使う
乾燥黄色エンドウ豆(Gelbe Erbsen)300g富澤商店・Amazon乾燥ひよこ豆やグリーンピース缶では風味がかなり変わる。なるべく黄色エンドウ豆を探す
バター大さじ3スーパー
玉ねぎ(ピューレ用)1個スーパーみじん切り
ラード大さじ1業務スーパー・ネット通販サラダ油で代用可だが風味は落ちる
塩・白コショウ適量スーパー
マスタード(粒なし、辛口ドイツ式)大さじ2(卓上用)KALDI・スーパー食べる際に添える

アレルゲン:豚肉(豚由来成分)、乳製品(バター)。ラードを使用する場合は豚由来。

ソース照合メモ

食材・工程現地語ソース(独語)英語ソース日本語ソース判定
塩漬け豚すね肉○(Hausmannskost定番として言及)○(germanfoods.org でEisbein言及)△(「アイスバイン」として一般に認知)必須
乾燥黄色エンドウ豆のピューレ○(北ドイツの組み合わせとして定番)○(Erbspüree / pea puree)△(日本語ソースでは言及少ない)必須(北ドイツ固有)
ローリエ・粒コショウ・クローブでの煮込み○(複数独語レシピで一致)必須
ラードで玉ねぎを炒めてピューレに加える○(独語ソースで頻出)なし必須(地域固有)
マスタードを卓上に添える○(定番の組み合わせ)必須
ザワークラウト添え○(南ドイツ・ベルリン式として言及)オプション(南ドイツ式、北ドイツでは豆ピューレが優先)

この料理を成立させる核

  • 豚すね肉は**必ず塩漬け(Pökelfleisch)**であること。生肉をただ煮ただけでは別の料理になる
  • 煮汁にローリエ・粒コショウ・クローブ・玉ねぎを入れて長時間(2〜2.5時間)ゆっくり煮ること。圧力鍋で短縮すると風味の層が変わる
  • 付け合わせは乾燥黄色エンドウ豆のピューレであること。これが北ドイツの家庭式。グリーンピース缶や別の豆に変えると別の料理になる
  • ピューレを仕上げる際にラードで炒めた玉ねぎを混ぜること。これが風味の核
  • 卓上に辛口マスタードを置くこと。調味ではなく食べ方として不可欠

作り方

  1. 前日まで: 塩漬けでない豚すね肉を使う場合は、水1Lに塩80gを溶かした塩水に肉を沈め、冷蔵庫で一晩(8〜12時間)漬ける。塩漬け済みのものはそのまま使う。
  2. 塩抜き: 塩漬け肉は使う前に冷水で30分さらす。塩辛すぎる場合はもう30分延長する。
  3. 煮込み開始: 大鍋に肉がかぶるくらいの水を入れる。玉ねぎ1個にクローブを3本刺して丸ごと加える。ローリエ、粒コショウ、オールスパイスを加えて強火にかける。
  4. アク取り: 沸騰したらアクを丁寧にすくう。弱火に落として蓋をし、2〜2.5時間煮る。肉が骨からするりと離れる状態が目安。
  5. 豆の下ごしらえ(前日〜): 乾燥黄色エンドウ豆は水に8時間以上浸す。水を切って新しい水で30〜40分やわらかくなるまでゆでる。
  6. ピューレを作る: 小鍋にラードを入れて中火にかけ、みじん切りにした玉ねぎを飴色になるまで炒める(10〜12分)。ゆでた豆をフォークかポテトマッシャーで粗くつぶし、炒めた玉ねぎをラードごと加えて混ぜる。バター大さじ2を加えてさらに混ぜる。塩・白コショウで味を調える。
  7. 盛り付け: 深皿にピューレを敷き、煮上がった肉を置く。煮汁を少量回しかける。マスタードを小皿に添えて卓上に置く。

食べ方

肉をほぐしながらピューレと一緒にすくって食べる。マスタードを肉につけながら食べるのが北ドイツの家庭式。黒パン(Schwarzbrot)があれば皿の汁を拭う。ビールがあれば出てくる。

補足

  • 失敗しやすいポイント: 塩漬け肉の塩抜きが不十分だと料理全体がしょっぱくなりすぎる。煮込み中に味見して、もし塩辛ければ水を足す。
  • 代用提案の風味差: 乾燥黄色エンドウ豆の代わりにグリーンピース缶を使うと甘みが増し、北ドイツらしいほくほくした土臭さが失われる。ひよこ豆ではピューレの質感が変わり、全体のバランスが崩れる。できるだけ黄色エンドウ豆を探すこと。
  • 時短バージョン: 圧力鍋で加圧45〜50分でも肉は柔らかくなる。ただし煮汁の複雑さが出にくいため、ローリエとクローブを倍量にして補う。
  • 翌日の楽しみ方: 残った煮汁はスープとして活用できる。刻んだキャベツや残りのピューレを加えてアイントップフ(一鍋煮)として食べるのが家庭の定番。
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