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- 国:イギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国) - 地域:イングランド、グレーター・ロンドン、シティ・オブ・ウェストミンスター - 気候・地形:西岸海洋性気候。年間を通じて曇天が多く、冬は日照時間が短い。テムズ川北岸の低地。標高はほぼ平坦。 - 暮らしの基本:人口密度が高い都市部。公営住宅(カウンシルフラット)と民間賃貸が混在。住民の多くは通勤族か長期居住者で、多国籍構成。公共交通(地下鉄・バス)を日常的に使う。食材はスーパーマーケット(テスコ、セインズベリーズ等)や地域の独立系食料品店で調達する。 ---
十一月。午後二時を過ぎても空は白く、光に方向がない。 あなたは歩道にいる。石畳ではなく、継ぎ接ぎのアスファルトだ。端のほうが盛り上がり、プラタナスの根が押し上げている。幹は三階の窓の高さまで届いていて、残った葉が数枚、濡れて貼り付いている。風は正面から来ている。体感温度は四度か五度。 通りの向こう、テラスハウスが横一列に並んでいる。全部おなじ顔の家が六軒。煉瓦は赤と褐色の中間で、染みが縦に走っている。一階の窓ガラスの内側に白いブラインドがある。降ろしてある。隣の窓には葉の枯れた植木鉢がのっている。誰かが外に出したまま忘れたようなかたちで。 バス停にビニール傘が一本、フェンスに立てかけてある。持ち主の姿はない。 キャリーのことはパーラメント・スクエアの近くで知った。正確にはキャリーの母親のことを、先に知った。ワゴン車の荷台に段ボールを積んでいる女性が、地図アプリを見ながら立ち止まっていた。あなたも同じ番地を探していた。それだけのことだった。 「うちに寄る?」 キャリー・ウィリアムズは四十二歳で、ナショナル・ヘルス・サービスの管理部門に勤めている。夫は三年前に別の区に転勤して、週末だけ戻る。娘が一人、十四歳で、今日は学校だという。 玄関のドアは内側に開く。廊下は狭く、左手にコート掛けがある。フック六本のうち四本にコートとジャケットが重なっている。床はラミネート材で、端が少し剥がれている。 廊下を抜けるとリビングとキッチンがひと続きになっている。右側にソファが二台、クッションが五つ六つ散らばっている。テレビは消えている。左側のキッチンカウンターに、アマゾンの配達袋が開封されたまま置いてある。 オーブンのランプがオレンジ色に点いている。 「もう四十分くらいかな」とキャリーが言った。英語だった。聞き取れた部分だけ。 オーブンから音はしない。ただ、熱が漂っている。窓の内側が少し曇っている。 シンクの横に電気ケトルがある。プラスチック製で、側面が変色している。その隣に陶製のキャニスターが三つ、並んでいる。ラベルに FLOUR、SUGAR、TEA と書いてある。 キャリーが引き出しを開けた。金属が当たる音。スプーンを一本取り出した。引き出しを閉めた。また音。 テーブルに椅子が四脚ある。キャリーが四枚、皿を重ねて運んできた。白地に青い縁。積み重ねたままテーブルに置いて、一枚ずつ広げた。 ストウのキャセロール鍋がカウンターにある。重い蓋で、開けると湯気が立った。次の瞬間、肉汁と野菜の煮えた匂いが広がった。オーブンのランプはまだついている。 キャリーがオーブンのドアを引いた。金属の軋み。中に白い陶製の深皿が一つあった。表面が焦げ茶色になっている部分がある。全体はアイボリーで、縁が少しだけ焦げている。あなたはその皿が何であるか、まだわかっていない。 湯気が上がった。テーブルに置かれた。 キャリーが椅子を引いた。 「Tuck in.」 あなたも椅子を引いた。 ---
今日のふらりごはん

Cottage Pie / コテージパイ

Cottage Pie / コテージパイ

この料理について

イングランドの家庭で長く作られてきた牛ひき肉のミートソースを、マッシュポテトで覆ってオーブンで焼く一皿料理。週の半ばや寒い日に作られることが多く、残り野菜や買い置きの食材で組み立てられる。シェパーズパイ(羊肉版)と混同されがちだが、牛ひき肉を使うものが Cottage Pie と呼ばれる。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
牛ひき肉500gスーパー全般脂質15〜20%程度が崩れにくい
玉ねぎ1個(大)スーパー全般粗みじん切り
にんじん2本スーパー全般1cm角のダイス切り
セロリ2本スーパー全般粗みじん切り
にんにく2片スーパー全般みじん切り
トマトペースト大さじ2スーパー全般ダブルコンセントレート缶が理想。なければトマト缶を煮詰めて代用可
ウスターシャーソース大さじ1スーパー全般、KALDILEA & PERRINS 製が英国では標準。日本のウスターソースは甘みが異なる(風味差あり)
ビーフストック250ml業務スーパー、KALDIキューブタイプを湯で溶かして使用可
薄力粉大さじ1スーパー全般とろみ付け用
タイム(乾燥)小さじ1スーパー全般フレッシュなら2〜3枝
ローリエ1枚スーパー全般煮込み中のみ、仕上げ前に除く
じゃがいも(粉質系)900gスーパー全般メークインより男爵・キタアカリが向く
バター大さじ3(45g)スーパー全般マッシュ用
牛乳大さじ3〜4スーパー全般温めてから加えると均一になる
チェダーチーズ(すりおろし)60gスーパー全般、成城石井表面の焦げ色をつけるために使用。省くと別物になる
塩・黒こしょう適量スーパー全般
サラダ油(または植物油)大さじ1スーパー全般炒め用

アレルゲン:乳成分(バター・牛乳・チェダーチーズ)、小麦(薄力粉)、セロリ(EU圏では主要アレルゲン指定)、ウスターシャーソースに魚成分(アンチョビ)

ソース照合メモ

食材・工程英語ソース(YouTube/クックパッド等)日本語ソース判定
牛ひき肉必須(Cottage Pie の定義)必須必須
玉ねぎ・にんじん・セロリ(ミルポワ)全ソース共通全ソース共通必須
ウスターシャーソース全英語ソース共通複数日本語ソースに記載必須(代用注意)
トマトペースト英語ソース多数日本語ソースの一部はトマト缶で代用必須(量は調整可)
ビーフストック全ソース共通全ソース共通必須
じゃがいもマッシュ(上蓋)全ソース共通全ソース共通必須(省くと別料理)
チェダーチーズ(表面)英語ソース多数に登場日本語ソースでも言及準必須(焦げ目の核)
タイム英語ソース多数一部のみ必須に準ずる
薄力粉(とろみ)多くの英語ソース複数の日本語ソース必須
ローリエ英語ソース多数複数日本語ソース必須に準ずる

この料理を成立させる核

  • 牛ひき肉を使うこと。羊ひき肉に替えると Shepherd's Pie という別の料理になる
  • マッシュポテトで全面を覆うこと。トッピングではなく「蓋」として機能させる
  • ウスターシャーソースを煮込みに加えること。酸味・旨味・深みの基盤になる
  • チェダーチーズを表面に散らしてオーブンで焦がすこと。表面のクラストがこの料理の食感の核
  • ミートソースにとろみをつけてから重ねること。水分が多いままだとマッシュ層が崩れる
  • 肉と野菜の層とマッシュ層を明確に分離すること。混ぜてしまうと別物になる

作り方

  1. じゃがいもを皮ごと水から茹でる。串が通ったら湯を切り、皮を剥く。温かいうちに潰し、温めた牛乳とバターを加えてなめらかに混ぜる。塩・黒こしょうで調味して置いておく。
  2. フライパンか厚手の鍋に油を中火で熱し、玉ねぎ・セロリを5〜7分炒める。透き通ってきたらにんにくとにんじんを加え、さらに3分炒める。
  3. 牛ひき肉を加えて強火にし、木べらで細かくほぐしながら全体が褐色になるまで炒める。余分な脂が多ければ紙タオルで吸い取る。
  4. 薄力粉を振り入れ、全体に絡めて1〜2分炒める。粉っぽさが消えたら、トマトペースト・ウスターシャーソース・ビーフストックを加える。
  5. タイムとローリエを加えて中火で20〜25分煮込む。とろみがついて表面が緩やかに泡立つ状態が目安。ローリエを除き、塩・黒こしょうで調味する。
  6. オーブンを200℃に予熱する。
  7. 深めの耐熱皿にミートソースを均一に広げる。上からマッシュポテトをスプーンで乗せ、全体を覆うように端まで伸ばす。フォークの背で表面に筋目をつけると焼き色がつきやすい。
  8. チェダーチーズを表面に均一に散らす。
  9. オーブンの上段で25〜30分焼く。表面が濃い焦げ茶色になったら取り出す。
  10. 5分ほど置いてから切り分ける。

食べ方

深皿に四角く切り分けて盛る。茹でたグリーンピース、さやいんげん、またはブロッコリーを添えるのが一般的。特別なソースはかけない。食卓でウスターソースを足す人もいる。

補足

  • 失敗しやすいポイント:マッシュポテトが水っぽいと層が崩れる。じゃがいもはしっかり水気を飛ばしてから牛乳を加えること。ミートソースのとろみが足りないまま重ねると底が水っぽくなる
  • 代用提案:ウスターシャーソースは日本のウスターソース+醤油少々で近づけられるが、甘みが出るので量は半量から調整する。チェダーチーズはグリュイエールまたはパルメザンで代用可能だが、風味は異なる
  • 時短バージョン:煮込みを15分に短縮する場合、コーンスターチ(小さじ2を水大さじ2で溶いたもの)を加えるととろみが早くつく。マッシュポテトはインスタントポテトで代用可(風味差大)
  • 翌日の楽しみ方:冷蔵後は層がしっかり固まり、切り分けやすくなる。160℃のオーブンで20分再加熱するか、電子レンジで加熱した後にグリルで表面を2〜3分焼くと焦げ目が復活する
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