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- 国:日本 - 地域:北海道南部、渡島半島先端/函館市 - 気候・地形:亜寒帯湿潤気候。冬は積雪・強風、夏は短く涼しい。函館湾と津軽海峡に面した港湾都市。背後に山が迫り、市街地は平野部が狭い。 - 暮らしの基本:漁業・水産加工業が主要産業。昆布の主要産地(真昆布)。イカ・タラ・ホタテ・コンブの流通が日常的。本州との交通結節点でもある。 ---
十一月の午後二時。あなたは函館市の西部、坂の途中にいる。 石畳ではなく、アスファルトにひびが走った細い路地。電柱が傾いている。変圧器のうなりが低く続いている。津軽海峡から吹いてくる風は、顔の右側だけを冷やす。潮の匂いはなく、ただ冷気に金属のような薄さがある。 坂の下に鮮魚店がある。発泡スチロールの箱が三段に積まれ、外側に氷の欠片が張り付いている。店先に下げられたビニール紐が一定のリズムで揺れている。 あなたが箱の横で立ち止まっていると、奥から五十代の男が出てくる。防水のエプロン、長靴、右手に軍手を片方だけ持っている。彼の名前は吉田隆夫。この店を継いで二十年になる。妻と、高校生の娘が一人。 「どこから来たの」 聞かれたので、答える。 「じゃあうちくる? 今日たらこ作るから」 断る理由がなかった。 店の裏手に回る。木の引き戸。取っ手の金属が冷たい。引くと、玄関が正面ではなく横にある間取りだった。靴を脱ぐ場所のタイルは白と灰色の市松模様で、角が欠けている箇所が三か所ある。 廊下を抜けると台所兼居間。六畳か、八畳か。テレビが音量を絞って競馬の結果を映している。石油ストーブが天板まで熱を持っていて、その上にやかんが乗っている。やかんの注ぎ口から、ごく細い白い筋が出ている。 吉田が冷蔵庫を開ける。大きなボウルがある。中に生のたらこが塊のまま入っている。薄い膜に血管が透けて見える。 「これ昨日水揚げのやつ」 台所の作業台は白いプラスチック製で、包丁の跡が縦横に走っている。まな板の横に、塩の袋と、昆布だしの入ったペットボトルが一本。 吉田は鍋を出す。土鍋ではなく、アルミの深鍋。底が少し焦げている。鍋に水を張り、昆布を一枚入れる。昆布の色は暗い緑で、表面に白い粉が吹いている。そのまま火にかける。 廊下の奥から足音。娘の声が一言、聞き取れない。吉田が短く返す。 昆布が鍋の底でゆっくりと動いている。湯が六十度を超えたあたりで、昆布の表面から細い糸のようなものが立ち始める。吉田は菜箸で昆布を引き上げ、たらこの塊を静かに沈める。 鍋の中の変化は目に見えない速度で進む。膜の表面の色が、灰みがかった赤からオレンジ寄りの赤に変わっていく。 「火、弱いくらいがいいんだわ」 吉田は蓋を半分だけかける。 台所に、あの独特の匂いが立ちこめてくる。磯の匂いでも、臭みでもない。昆布の出汁が熱されたときの、甘みとも旨みとも判断しにくい揮発。 吉田の妻が奥から来る。五十歳くらい。割烹着ではなく、長袖のフリース。手に白いご飯の入った茶碗を二つ持っている。 テーブルに置かれる。箸が出る。 鍋のたらこが引き上げられ、まな板の上で切り分けられる。断面の色は均一な橙。膜は張りを保っている。 皿に盛られたそれが、ご飯の横に置かれる。 吉田が向かいに座る。 「どうぞ」 ---
今日のふらりごはん

料理名

昆布だし煮たらこ / 函館式ぽんたら

この料理について

函館近郊で水揚げされる生スケトウダラの卵(生たらこ)を、真昆布のだしで低温ゆっくり煮る家庭料理。塩蔵たらこではなく生たらこを使う点が流通の特性による。ご飯の副菜として、特別な日でなく日常的に食卓に出る。

材料(2〜3人分)

食材分量日本での入手備考
生たらこ(スケトウダラ卵)300〜400gスーパー(10〜12月が旬)、北海道物産展、魚屋塩たらこ・辛子明太子では別の料理になる
真昆布15cm × 1枚KALDI・富澤商店・スーパー昆布コーナー函館産が最も近い。なければ日高昆布でも可(風味差あり)
500ml
大さじ2スーパー料理酒可
薄口しょうゆ小さじ1〜2スーパー色を濃くしたくない場合。なくても可
みりん大さじ1スーパー

アレルゲン:魚卵(たらこ)、昆布(甲状腺疾患の方は摂取量に注意)

ソース照合メモ

食材・工程現地語ソース(函館・北海道)英語ソース日本語全国ソース判定
生たらこ(塩蔵ではない)函館真昆布レシピ集・函館農水産物ブランド推進協議会クックパッド函館タグに複数レシピ確認必須(函館固有)
真昆布でだしを取る函館真昆布公式レシピ集に明記複数レシピで言及必須
低温・弱火で煮る函館系レシピ全般で強調全国レシピでも共通必須
薄口しょうゆ・みりんクックパッド函館タグ・家庭レシピ複数全国レシピと一致推奨(量はお好みで)
家庭レシピ複数全国レシピと一致推奨

この料理を成立させる核

  • 生たらこを使う:塩蔵・加工済みのたらこでは塩分・食感が根本的に変わる
  • 昆布だしを引く:水だけで煮ると旨みの層が薄くなる。顆粒だしで代用すると風味の輪郭が変わる
  • 低温・弱火を守る:沸騰させると卵の膜が破れ、身がパサつく。湯温は70〜80℃をキープ
  • 調味を最小限にする:たらこ自体の旨みと昆布だしが主役。過剰な味付けは素材を殺す

作り方

  1. 昆布を水500mlに30分以上浸す(時間がない場合は10分でも可)
  2. 鍋を弱〜中火にかけ、昆布を入れたまま60℃になるまでゆっくり加熱する
  3. 昆布が鍋底でふわっと動き始めたら(沸騰前)、昆布を取り出す
  4. 酒・みりんを加え、ひと混ぜする
  5. 生たらこを房ごと(切らずに)静かに沈める
  6. 弱火にして蓋を半分ずらした状態で10〜15分煮る。沸騰させない
  7. たらこの表面の色が均一なオレンジ色に変わったら火を止める
  8. 煮汁の中で5分置いてから引き上げる(余熱で中まで火を通す)
  9. まな板に取り出し、食べやすい大きさに切り分ける
  10. 好みで薄口しょうゆを小さじ1〜2、煮汁に加えてたらこにかけてもよい

食べ方

熱いご飯と一緒に。煮汁も少量かけると昆布だしがご飯に染みる。そのままで食べるほか、ほぐして海苔で巻く食べ方も一般的。

補足

  • 失敗しやすいポイント:火が強すぎて沸騰させると膜が破れ、卵がぼろぼろになる。弱火の徹底が最重要
  • 代用提案:真昆布がなければ日高昆布でも可。ただし日高昆布は粘りが出やすく、だしの甘みがやや控えめになる
  • 生たらこの入手が難しい場合:10〜12月の旬の時期に北海道物産展やオンラインショップを活用。生冷凍(未加工・無塩)のたらこでも代用できる。塩たらこ・明太子は不可
  • 翌日の楽しみ方:残った煮汁に大根や豆腐を入れて温め直すと、昆布だしの副菜になる
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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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