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- 国:日本 - 地域:神奈川県横浜市(緯度経度は保土ケ谷区・旭区周辺の住宅地帯に相当) - 気候・地形:太平洋側温帯気候。夏は高温多湿、冬は乾燥して穏やか。丘陵と谷戸が入り組んだ地形で、斜面に住宅が密集する区画が多い。 - 暮らしの基本:通勤圏内のベッドタウン。スーパー・ドラッグストアが徒歩圏に揃う。戸建てと集合住宅が混在。共働き世帯が多く、週末に作り置きをする文化が根付いている。 ---
坂の途中で立ち止まる。アスファルトの継ぎ目に、先週の雨で黒くなったコケが筋を引いている。左手には金属製のガードレール。錆が浮いて、白い塗装が剥げた部分が三か所。右手には擁壁。コンクリートの表面に雨だれの跡が縦に走っている。 坂を下りきると、幅二メートルほどの路地に出る。電柱が一本、斜めに傾いている。根元にプランターが三つ。土が乾いて表面がひび割れている。 植木鉢の前に、男性が立っている。四十代半ば、作業着の上下、腰に軍手をぶら下げている。プランターのひとつを持ち上げて、裏側を確認している。 「あ、ちょうどよかった」 声をかけてくる。この辺を歩いているなら、と言う。続きは聞き取れない。名前は竹内さんというらしい。近所の自治会でゴミステーションの管理をしているという話が断片的に聞こえる。 「ちょうど夕飯できるとこで。よかったら」 断る理由を探す間もなく、路地の奥の引き戸が開いている。 --- 三和土に革靴が一足。その隣に、子ども用の運動靴が二足、かかとを踏んだまま脱いである。上がり框の木が、踏むたびに鈍い音を立てる。 廊下の壁に、ランドセルが引っかかっている。赤いランドセル。肩ベルトの付け根のステッチがほつれている。 台所から音がしている。油が弾く音。それより低い音で、鍋の中で何かが転がる音。玉ねぎが炒められるときの、水分が抜けていく匂いが廊下まで届いている。 リビングに通される。六畳ほど。コタツ台が出ている。天板のガラスの下に、雑誌と学校のプリントが挟まっている。テレビは消えている。窓の外、隣の家の屋根がすぐそこにある。 「散らかってて」 台所から声がする。竹内さんの妻と思われる人物が、エプロンをつけたまま顔だけ出す。三十代後半か四十代か。髪を後ろでひとつにまとめている。 コタツの向かいに、小学校低学年くらいの子どもが二人、腹ばいになってタブレットを見ている。上の子が下の子の背中に顎をのせている。 --- 台所から出てくる音が変わる。何かを鍋に加えた音。液体が沸騰する前の、低い泡立ちの音。 「おかわりできるから」 妻の声がする。それから、子どもたちを呼ぶ声。呼ばれても、子どもたちはすぐには動かない。二度目の声でタブレットが置かれる。 食卓に着く。テーブルの中央に、鍋敷きの上に土鍋が置かれている。蓋が少し浮いている。蓋の縁から白い蒸気が断続的に出ている。 土鍋の周りに、白い茶碗が人数分。漬物の小皿。醤油差し。 竹内さんが蓋を取る。蒸気が上がる。根菜の断面が見える。白い塊。透き通った汁。油の膜が表面を薄く覆っている。 里芋の角が、煮崩れる手前でとどまっている。大根は箸で持てばすぐに割れそうな厚みだ。豆腐が二、三切れ。蒟蒻の断面が鍋肌に張り付いている。椎茸の軸が、汁の中に沈んでいる。 「いただきます」 子どもたちの声が重なる。 ---
今日のふらりごはん

けんちん汁

けんちん汁 / Kenchinjiru

この料理について

神奈川県の三浦半島に近い建長寺(鎌倉)を発祥とするとされる汁物で、関東の家庭では平日の夕食に頻繁に登場する。横浜市が地産地消の文脈でも取り上げており(横浜市公式サイト掲載レシピ「野菜たっぷり!けんちん汁」)、横浜・川崎を含む神奈川県内の家庭での根付きが確認される。肉を使わない精進由来の汁物だが、現代家庭では鶏肉やごま油を使うバリエーションも一般的。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
木綿豆腐1丁(約300g)スーパー全般水切りをしっかり行う
大根1/4本(約250g)スーパー全般厚さ5mm程度のいちょう切り
里芋4〜5個(約200g)スーパー・農産直売所皮をむいて塩でぬめりを取る
人参1/2本(約80g)スーパー全般いちょう切りまたは乱切り
牛蒡1/3本(約60g)スーパー全般斜め薄切りにして水にさらす
こんにゃく1/2枚(約120g)スーパー全般手でちぎる・下茹でする
干し椎茸3枚スーパー全般水で戻して戻し汁も使う
長ねぎ1/2本スーパー全般斜め切り
木綿豆腐追記:絹豆腐は不可炒める工程で崩れやすくなるため
ごま油大さじ1スーパー全般炒め用。これが風味の核になる
だし汁(昆布+かつお)1000mlスーパー全般市販のだしパックで可
醤油大さじ2〜2.5スーパー全般薄口でも可
大さじ1スーパー全般
小さじ1/2スーパー全般味を見て調整

アレルゲン:大豆(豆腐・醤油)、小麦(醤油)、ごま。かつおだしを使う場合は魚介類。

ソース照合メモ

食材/工程現地語ソース(横浜市公式・カナロコ)英語ソース日本語ソース(一般)判定
木綿豆腐を炒める横浜市公式に「野菜たっぷりけんちん汁」として記載英語ソース提供なしCookpad等で共通必須
里芋横浜市公式レシピに記載複数ソース共通必須
ごま油で炒める工程カナロコ掲載レシピに言及一般けんちん汁で共通必須(風味の核)
干し椎茸の戻し汁をだしに加える一般レシピに共通複数ソース共通必須
こんにゃくを手でちぎる一般レシピに共通複数ソース共通必須(断面が汁を含みやすくなる)
牛蒡横浜市公式に記載複数ソース共通必須
鶏肉一部ソースのみ家庭によって異なるオプション

この料理を成立させる核

  • 豆腐を油で炒めてから煮る:これが「けんちん汁」と「具だくさん味噌汁」を分ける最大の特徴。炒めることで豆腐が崩れにくくなり、香ばしさが汁全体に移る
  • ごま油で野菜と豆腐を炒めること:香りの土台になる。サラダ油に替えると別の汁物になる
  • だしに干し椎茸の戻し汁を混ぜること:うま味の二重構造を作る
  • こんにゃくを手でちぎること:包丁で切るより断面が大きくなり汁が染みる。省くと食感の核が失われる
  • 醤油ベースで仕上げること:味噌を使うと別の汁物になる(味噌けんちんは別品)
  • 肉を使わない、または最後まで入れない:精進由来の構造として、野菜と豆腐だけで成立させることが本来の形

作り方

  1. 木綿豆腐はキッチンペーパーに包み、重しをのせて15〜20分水切りする。干し椎茸は水200mlに30分以上浸けて戻す。戻し汁は捨てない。
  2. 里芋は皮をむいて塩少量(分量外)で揉み、水でぬめりを洗い流す。大根・人参はいちょう切り。牛蒡は斜め薄切りにして5分水にさらす。こんにゃくは手でちぎり、沸騰した湯で2分下茹でしてザルにあげる。干し椎茸は水気を絞って薄切り。
  3. 鍋にごま油大さじ1を中火で熱する。水切りした豆腐を手で大きめに崩しながら鍋に入れ、表面が少し色づくまで2〜3分炒める。
  4. 牛蒡・人参・大根・里芋・こんにゃく・椎茸を順に加え、全体に油が回るまで中火で2〜3分炒める。
  5. だし汁(昆布+かつお)1000mlと干し椎茸の戻し汁を加える。中火で沸騰させ、アクが出たらすくい取る。
  6. 弱火に落とし、里芋と大根が箸でスッと通るまで15〜20分煮る。
  7. 酒大さじ1、醤油大さじ2を加える。味を見て塩で調整。長ねぎを加えてひと煮立ちさせたら火を止める。

食べ方

茶碗にご飯を盛り、汁椀によそって並べるのが標準的な形。漬物を添える。汁は多めに作っておき、鍋ごと食卓に出して各自でおかわりする家庭が多い。

補足

  • 失敗しやすいポイント:豆腐の水切りが不十分だと炒める際に水が出て蒸し状態になり、香ばしさが出ない。15分以上の水切りを省かないこと。
  • 里芋のぬめり:塩揉みと下洗いを省くと、汁が濁ってとろみが強くなりすぎる。それが好みであれば省いてもよい。
  • 代用提案:牛蒡が手に入らない場合はれんこんで代用可。食感は異なるが汁の構造は保たれる。風味は牛蒡のほうが土っぽさがあり汁全体が締まる。
  • 時短バージョン:干し椎茸の代わりに市販のだしパック(昆布椎茸合わせ)を使い、戻し工程を省略できる。風味のコクはやや落ちる。
  • 翌日の楽しみ方:翌日は里芋がさらに崩れてとろみが増す。そのまま温め直すか、冷ましてから冷蔵で2日以内に食べる。
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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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