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- 国:モルディブ共和国 - 地域:ヴァーヴ環礁(フェリドゥ環礁)。首都マレから南東に約70km。環礁内に5つほどの有人島が点在し、フェリドゥ島が行政の中心。観光リゾートよりも地元住民が多い環礁で、漁業と農業が生活の軸。 - 気候・地形:赤道近傍の熱帯海洋性気候。年間平均気温28〜30℃。サンゴ礁に囲まれた低平な島々で、最高標高は2メートル程度。南西モンスーン期(5〜10月)に雨が集中。海面上昇の影響を受けやすい。 - 暮らしの基本:島間の移動は船。食材の大部分を海に依存し、カツオ・マグロ類が主要タンパク源。ヤシが各戸に植わり、ココナッツは日常的に使われる。住民の大多数がスンニ派イスラム教徒で、豚肉・アルコールは家庭に入らない。 --- #
桟橋の板が鳴る。一枚ずつ、順番に。あなたはその上を歩いている。 板の継ぎ目から光が見える。海の色は白に近い緑で、下が砂地だとわかる。波はない。潮の匂いだけがある。あなたの足の甲が日差しで熱い。 島に入ると舗装が途切れる。白いサンゴ砂の道が家々の間を抜けている。道幅は二人すれ違えるかどうか。両側にブロック積みの壁。壁の上からヤシの葉が出ていて、その葉が風でこすれる音がする。 道の途中に小屋がある。屋根だけの、壁のない小屋だ。中に木製のベンチが二脚。地面はコンクリート。小屋の柱に太い釣り糸が巻いてある。誰もいない。 あなたの前を原付が走り抜ける。ヘルメットなし、スリッパで乗っている。荷台にプラスチックのかごが括りつけてある。中に何かが光っている。 一本入った細い道で、男が立っている。四十代くらい、半袖の白いシャツ、腰にサロン風の布を巻いている。手に袋を持っている。袋の底が濡れている。男の名前はアハマドといった。彼の友人があなたと同じ宿に泊まっているという話がどこかで出て、あなたたちはその名前で繋がった。アハマドは袋を持ち直して、顎で方向を示した。 「来るか」 家は道から数歩のところにある。ドアは開いていた。格子のついた木の扉で、内側にカーテンが垂れている。カーテンは緑と白の格子柄。あなたはその後ろに入る。 室内は薄暗い。窓が一つ、すりガラスになっている。床はタイル、白と灰色の市松模様。壁は水色に塗ってある。天井からファンが回っていて、その風がカーテンの端を揺らしている。 ソファが二脚、テレビが一台。テレビは点いていないが、電源ランプが赤く光っている。棚にコーランが一冊、その隣に充電ケーブルが束ねてある。床の隅に子どものサンダルが三足、揃えずに脱いである。 台所は奥にある。アハマドの妻、ファトゥマタが立っている。三十代後半、黒いヒジャブ、足元は素足。彼女の手が何かを絞っている。白い液体が容器に落ちる。ヤシの実の半割りが台の端に積んである。絞り終えた果肉は別のボウルに捨てる。その繰り返し。 鍋が火にかかっている。ガスコンロ、二口。こちらの口で何かが煮えている。鍋の縁に雫が伝って蒸発する。焦げではなく、草のような、酸味のある匂い。 ファトゥマタが何かを言って、隣の部屋に向かう。しばらくして子どもたちの声がする。七歳か八歳の兄と、それより小さい妹。妹が台所に走ってきてファンの前に立ち、スカートの裾を持ち上げる。ファトゥマタが戻ってきて何か言う。妹は去る。 アハマドが冷蔵庫を開ける。なかにペットボトルが何本かある。水とマンゴーのジュース。彼はコップを二つ出す。コップの底に小さいひびが入っている。 台所から音が変わる。固いものを叩く音。包丁ではなく、もっと平たい音。ファトゥマタが、白い半円形のもので何かを砕いている。それが終わると、ボウルの中でかき混ぜる音が続く。手が速い。 窓の外で急に雨が来る。屋根に当たる音が大きい。ヤシの葉が揺れて、光が変わる。アハマドが窓を少し閉める。雨の音がくぐもる。そのまま続く。 子どもたちが戻ってくる。兄が先に座る。低いテーブルが台所から運ばれてくる。床に直接置く。その周りに座布団のような平たいクッションを配置する。ファトゥマタが皿を持ってくる。白いご飯が一つ。もう一皿、白い繊維状のものが小口の玉ねぎや青唐辛子と混ざっている。小さい赤いものが散っている。その皿はすぐ隣に置かれる。 ライムを半分に切ったものが皿の端に置いてある。 ファトゥマタがアハマドに何かを言う。アハマドが子どもたちに何かを言う。妹がまだ来ていない。しばらく待つ。妹が走ってくる。濡れた足のままタイルに上がる。アハマドが一言だけ言う。妹は足を拭きに行く。 戻ってくる。 全員が揃う。 手がご飯のほうに伸びる。 --- #
今日のふらりごはん

料理名

Mas Huni / マスフニ

この料理について

マスフニはモルディブの家庭で朝食または軽食として日常的に食べられる料理で、ご飯やロシ(薄焼きパン)と合わせて出される。特別な日の料理ではなく、漁師の島では水揚げされたカツオやマグロをそのまま使う平日の食卓の一品。カツオ節に近い加工魚(ヒキマス)をほぐして、すりおろしたフレッシュ・ヤシと玉ねぎで和えたもの。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
ツナ缶(水煮または油漬け)2缶(160g×2)スーパー本来はヒキマス(モルディブ式燻製カツオ)をほぐして使う。油漬けは油をよく切る
ヤシの実の白い果肉(フレッシュ・ヤシ肉)150gKALDI、アジア系食材店、Amazon(冷凍品)なければ無糖デシケーテッド・ヤシ粉(ドライ・ココナッツ)で代用。ただし水分感と甘みが落ちる。
紫玉ねぎ(または白玉ねぎ)1/2個(約80g)スーパーできるだけ細かいみじん切り
青唐辛子1〜2本業務スーパー、アジア系食材店辛さ調整はここで行う。鷹の爪(乾燥)は風味が変わるため少量で
ライム果汁大さじ1〜2スーパー(果汁100%パック)レモン汁でも可。柑橘の酸が料理を引き締める
小さじ1/2〜1スーパー仕上げに調整
モルディブ・フィッシュ(ヒキマス)あれば30g富澤商店、ハラール食材店(粉末品)、Amazon粉末タイプが流通している。代用ツナ缶に加えると魚の深みが増す

アレルゲン:魚(ツナ)、ヤシ(ツリーナッツに準じる。アレルギーの有無を確認すること)


ソース照合メモ

食材現地語・英語ソース(therecipekitchen / facebook)日本語ソース(groovymaldives / kinnie-san)判定
ツナ/ヒキマス(燻製カツオ)✓ tuna as staple / smoked fish✓ ツナ缶またはヒキマス必須
フレッシュ・ヤシ肉(すりおろし)✓ hand-grated coconut✓ (言及あり)必須・核心要素
紫玉ねぎ✓ 紫玉ねぎ・玉ねぎ必須
青唐辛子✓ 青唐辛子または鷹の爪必須
ライム/レモン汁✓ レモン汁必須
カレーリーフ言及なし△ 「あれば」と注記ありオプション
かつお節(フレーク)言及なし◯ kinnie-sanに記載日本向けアレンジ(ヒキマス代用)としてオプション

この料理を成立させる核

  • フレッシュ・ヤシ肉のすりおろし、またはデシケーテッド・ヤシ(無糖):ここにマスフニのテクスチャーと甘みが宿る。ヤシを省くと別の料理になる
  • 魚のほぐし身の繊維感:ツナ缶でもよいが、つぶさず繊維をほぐすように扱うこと。ペースト状にしない
  • 生の玉ねぎと青唐辛子の辛さ:炒めない。加熱しない。この生感がマスフニの食感を作る
  • ライム(または柑橘)の酸:なければ成立しない。魚のくさみを消し、ヤシの甘みを引き立てる
  • 全て混ぜるだけで、火を入れない:これがマスフニの定義。加熱した時点でマスフニではなくなる

作り方

  1. ツナ缶の汁をよく切る。フォークで繊維をほぐす。つぶさない。
  2. フレッシュ・ヤシ肉を使う場合、おろし金またはフードプロセッサーで細かくすりおろす。デシケーテッド・ヤシを使う場合は、ぬるま湯大さじ2を加えて10分置いてから使う。
  3. 紫玉ねぎを細かいみじん切りにする。青唐辛子は種ごと(辛さを抑えたい場合は種を取る)みじん切りにする。
  4. 大きめのボウルに、ほぐしたツナ、すりおろしたヤシ肉、玉ねぎ、青唐辛子を入れる。
  5. ライム汁を加え、塩を加えて全体をよく混ぜる。
  6. 味を見て、塩・ライム汁を調整する。ヤシの甘みと魚の塩気と酸のバランスを確認する。
  7. 皿に盛り、白いご飯の横に添える。

食べ方

白飯(ご飯)と一緒に食べるか、ロシ(薄焼きのチャパティに近い無発酵パン)と合わせる。モルディブの家庭では朝食に出ることが多いが、昼食や軽食にも出る。手でご飯とマスフニを混ぜながら食べるスタイルが一般的。ライムを絞ってから食べる。


補足

  • 失敗しやすいポイント:ツナ缶の水分を切り切れていないと、全体がべちゃっとする。しっかり水を絞ること。また玉ねぎを炒めてしまう失敗が多い——加熱しないことが前提
  • 代用の風味差:デシケーテッド・ヤシはフレッシュ・ヤシに比べて水分と甘みが足りない。ぬるま湯で戻しても差は残る。フレッシュ・ヤシが手に入るなら迷わずそちらを使う
  • モルディブ・フィッシュ粉末を加える場合:ツナ缶に小さじ1〜2のヒキマス粉末を混ぜると、現地の風味に近づく。入手できれば試す価値がある
  • 時短バージョン:ツナ缶+デシケーテッド・ヤシ+紫玉ねぎ+青唐辛子(鷹の爪)+レモン汁のみで10分以内に完成する。材料が揃えばこれで十分
  • 翌日の楽しみ方:冷蔵庫で一晩置くと玉ねぎの辛みが少し和らぎ、全体がなじむ。ただし翌日以降は水分が出てくるため、食べる前に軽く水気を切るとよい

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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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