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- 国:ポーランド共和国 - 地域:マゾフシェ県、ブウォニェ郡村部(Błonie-Wieś)。ワルシャワ西方約30kmの農村地帯 - 気候・地形:大陸性気候。平坦な低地が続く。冬は0℃を下回る日が続き、夏は30℃近くなる。降水は年間を通じて分散。農地と小集落が混在する景観 - 暮らしの基本:農業従事者と近郊ワルシャワへの通勤者が混住。一戸建て住宅が多く、菜園を持つ家が多い。カトリック信仰が生活暦に根づいている --- #
十月の午後三時。あなたは砂利道に立っている。 道の両側に低い生垣が続く。トウガラシではなくキャベツ。茶色く枯れかけた葉が何列も、畑の中に伏せている。土は湿っている。昨夜の雨が地面にまだ残っていて、靴底に少しずつ貼りついてくる。 金属の郵便受けが傾いたまま杭に刺さっている。番地を示す白いプレートに、手書きで数字が重ね書きされている。何度か書き直した跡がある。 バスを降りて三十分歩いた。地図アプリは電波が弱くなって止まっている。 煙突から煙が出ている家の前で、あなたは足を止めた。庭に軽トラックが一台。荷台にビート(砂糖大根)が積み上がったままになっている。収穫が途中で止まっている。男が軽トラックの前輪の横にしゃがんでいて、タイヤを手で叩いている。五十代の半ば、防水ズボン、青いフリースの上着。パウェウ、と誰かが呼んだ。家の中からだった。男は返事をせずにもう一度タイヤを叩いた。 あなたが地図を持って立っていたことに、男が気づいた。 短い会話があった。あなたのポーランド語は単語しか出てこない。男はワルシャワで少し働いたことがあると言い、英語で「come, come」と言った。ジェスチャーで家の中を指した。 コンクリートの三段の階段を上がると、玄関ドアに犬の首輪がかかっている。犬は見えない。 廊下は狭い。壁に子ども用のバックパックが二つ。青と赤。リノリウムの床が軋む。 台所から音が来ている。鍋の中で何かがぐらぐらと循環している音。あと、短く油が跳ねる音。 台所の入り口に、女が立っている。四十代、エプロン、短く切った髪。パウェウの妻だと思われる。あなたを一瞥して、椅子を引いた。テーブルの前の椅子。白いビニールクロスが敷いてある。 テーブルの上にパンがある。薄切りのライ麦パンが皿に重なっている。バターが小皿に。 ラジオが台所の棚の上にある。ニュースの声が流れていたが、女がつまみを回して音量を下げた。 窓の外で、犬が吠えた。それまで吠えていなかった犬が、急に続けて三回。それからまた静かになった。女がちらりと窓を見た。パウェウが外から戸を閉める音がした。 小学生くらいの子どもが二人、廊下の奥から顔を出した。女が短く何か言うと、二人はまた引っ込んだ。 ストーブの上に大きな鍋。蓋がわずかにずれていて、そこから湯気が細く出ている。あなたは椅子に座っている。鍋の中で何かが転がるような音がまだ続いている。 女がフライパンを火にかけた。ラードがゆっくり溶けていく。玉ねぎが入った。玉ねぎが縮んでいく音が台所に広がる。 パウェウが手を洗いながら台所に入ってきた。石けんの匂い。 女が鍋の蓋を取った。湯気が一度に出た。白い。天井に向かって拡散する。鍋の縁の下から、茶色と白の混ざった色が見える。何かがゆっくり沈んで、ゆっくり戻っている。 ライ麦パンとバターが先に置かれた。あなたの前に。次に小さなガラスのコップ。パウェウが何か言って笑った。 女が鍋から直接、深皿によそった。スプーンを皿の縁に立てかけて、テーブルに置いた。スプーンが一度だけ傾いて、止まった。 湯気が上がっている。白い湯気の下に、白いものと黄色いものと、焦げ茶色に炒まった玉ねぎが見える。サワークリームらしきものが表面に沈みかけている。 パウェウが座った。パンを一枚取った。 あなたはスプーンを手に取った。 --- #
今日のふらりごはん

料理名

Żurek / ジュレク(ライ麦サワースープ)

この料理について

ジュレクはライ麦粉を乳酸発酵させた「サワー種の汁(żur)」を出汁にしたスープで、マゾフシェ地方を含むポーランド中部・中央部で日常的に食べられる家庭料理。茹でたジャガイモと白ソーセージ(biała kiełbasa)を入れ、サワークリームで仕上げるのが平日の定番の形。復活祭の食卓でも出るが、週のふつうの昼食・夕食にも登場する。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
ライ麦サワー種汁(żur / zakwas)— 瓶詰め500mlポーランド食材店・Amazon("zakwas na żurek"で検索)代用:ライ麦粉70g+ぬるま湯500ml+にんにく1片を3〜4日発酵させる(下記補足参照)
ポーランド白ソーセージ(biała kiełbasa)300gポーランド食材店、ハラール系精肉店には代替ソーセージあり代用:粗挽き豚肉ソーセージ(市販の荒びきポークウインナー)。食感は近いが燻製風味がない
じゃがいも3〜4個(約500g)スーパー男爵またはキタアカリ。粉質系が向く
玉ねぎ1個スーパー
にんにく2片スーパー
ラード大さじ2富澤商店・業務スーパー代用:サラダ油。風味がやや軽くなる
サワークリーム大さじ4〜5KALDI・成城石井・Amazon代用:生クリームに少量のレモン汁。酸味が弱くなる
ゆで卵4個スーパー仕上げに添える
マジョラム(乾燥)小さじ1スーパーのスパイス棚これが風味の核(下記「核」参照)
西洋ホースラディッシュ(chrzan)小さじ1〜2ポーランド食材店・Amazon(瓶詰め)代用:わさびで代用可能だが、風味の方向がかなり変わる
月桂樹の葉2枚スーパー
黒粒胡椒5粒スーパー
適量

アレルゲン:小麦(zakwasにライ麦=グルテン含有)、豚肉(ソーセージ・ラード)、乳製品(サワークリーム)、卵

ソース照合メモ

食材・工程現地語ソース(PL)英語ソース日本語ソース判定
zakwas(サワー種汁)使用kuchnia-domowa.pl等に記載複数英語レシピで"sour rye soup base"として言及poland.travel・witam-pl.com参照必須
白ソーセージ(biała kiełbasa)PL家庭料理サイト複数で共通英語サイトでも"white sausage"として記載culture.pl参照必須
じゃがいもPL全ソース共通全英語ソース共通記載あり必須
マジョラムPL現地語ソースで強調英語ソースも言及一部記載必須・核
サワークリーム仕上げPL複数ソース共通英語ソース共通記載あり必須
ゆで卵添えPL家庭料理ブログ複数英語ソースの多くで言及言及あり必須(地域標準)
ラード炒めPL現地語ソースに多い英語では「油」と書くものも記載なし地域固有・推奨
ホースラディッシュPL一部ソースに出現英語一部なしオプション(マゾフシェ周辺で好まれる)

この料理を成立させる核

  • zakwas(ライ麦サワー種汁)の酸味が全体の骨格。缶・粉末スープの素で代替するとジュレクではなく別のスープになる
  • マジョラムは省略不可。この乾燥ハーブが「ジュレクの匂い」を作っている。他のハーブで代替すると別物になる
  • サワークリームは調理の最後に加えること。沸騰した状態で加えると分離する
  • **biała kiełbasa(白ソーセージ)**はスモークしていないポーク主体のソーセージ。燻製ソーセージを使うと風味が全く変わる
  • じゃがいもはスープの中で崩れかけるくらいまで柔らかくする。形を保つように茹でない

作り方

  1. じゃがいもを皮をむいて4等分し、塩少量を入れた湯で柔らかくなるまで茹でる(約15分)。茹で汁は500ml取っておく
  2. 白ソーセージを鍋に入れ、月桂樹の葉・黒粒胡椒と一緒に水500mlで茹でる(約10分)。ソーセージを取り出し、茹で汁はスープに使う
  3. フライパンにラードを溶かし、みじん切りの玉ねぎを中火で炒める。薄い茶色になったらおろしにんにくを加え、さらに30秒炒める
  4. 大きめの鍋にじゃがいもの茹で汁とソーセージの茹で汁を合わせ(合計約1L)、中火にかける
  5. zakwas 500mlを加える。沸騰直前で弱火にする
  6. 3の炒め玉ねぎ・にんにくを加える。マジョラムを加える
  7. 茹でたじゃがいもとソーセージ(一口大に切る)を鍋に入れ、弱火で5分
  8. 火を止めてから、サワークリームを一杯ずつ加えながら混ぜる。再び火をつける場合は絶対に沸騰させない
  9. 塩で味を整える。ホースラディッシュを加える場合はここで
  10. 深皿に盛り、半分に切ったゆで卵を添える

食べ方

ライ麦パンと一緒に食べる。パンをちぎってスープに浸す食べ方が家庭では一般的。昼食の主皿として出ることが多い。スープとパンだけで一食になる。

補足

zakwas自家製の場合(瓶詰め入手困難な場合)

  • ライ麦粉70g、ぬるま湯(40℃前後)500ml、にんにく2片(押しつぶす)、黒パン1切れをガラス容器に入れ、常温で3〜4日置く。1日1回かき混ぜる。酸っぱい匂いが出てきたら完成。室温が低いと時間がかかる

失敗しやすいポイント

  • サワークリームを熱いまま加えると白い粒状に分離する。必ず火を止めてから少量ずつ加える
  • zakwasを大量に入れすぎると酸味が強くなりすぎる。最初は300mlで試してから好みで調整

代用品の風味差

  • ラード→サラダ油:コクが減る。バター10gを加えると多少近づく
  • 白ソーセージ→荒びきウインナー:塩気が強く、ハーブの風味が異なる。マジョラムを少し増やすと近づく
  • サワークリーム→生クリーム+レモン汁:酸味の角がなくなる。コクはある

翌日 一晩置くと酸味がまろやかになり、じゃがいもがさらに崩れてスープが濃くなる。温め直しは沸騰させず弱火で

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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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