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- 国:カンボジア王国 - 地域:シェムリアップ州・シェムリアップ市街地 - 気候・地形:熱帯モンスーン気候。乾季(11〜4月)と雨季(5〜10月)が明確に分かれる。トンレサップ湖の北岸に近く、平坦な低地。標高10m前後。雨季には周辺の水田が水没することがある - 暮らしの基本:農業(稲作)と漁業が基盤。高床式の木造住宅が多い。市街地では地面に直接建つコンクリートブロック造の家も混在。炊事は家の外や土間で行われることが多い。朝の屋台・市場での食材調達が日課 ---
道は赤土に砂を混ぜたような色をしている。乾季の終わりかけで、バイクが通るたびに細かな土が舞い上がり、喉の奥に薄く積もる感覚がある。街路樹の葉は白みがかっていた。 あなたは路地に入ってきた。両脇の家は、コンクリートブロックを積んで建てたものと、古い木の板を重ねたものが交互に続く。トタン屋根の下に吊るされた洗濯物が、風のない午後にそのまま垂れ下がっている。青いポリ袋が一枚、フェンスの金属線に引っかかって、音もなくそこにいる。 小さな雑貨屋の前のプラスチック椅子に、四十代くらいの女性が腰かけていた。膝の上に袋を置き、親指の爪でライムを押している。目は合ったが、特に何も起きなかった。 角を曲がったところで、犬が急に鳴いた。繋がれた様子はなかったが、その場から動かなかった。道の脇に積まれたプラスチックのケースの陰から、七歳か八歳くらいの子どもが顔を出した。あなたと目が合い、引っ込んだ。また出てきた。 「どこに行くの」というような音が聞こえた。クメール語だったが、意味はわからなかった。 奥から女性の声がした。子どもの名前を呼んでいるようだった。三十代の女性が、戸口の布をめくって出てきた。サリン、という名前が空気に残った。 彼女は手にバナナの茎を一本持っていた。切ったあとが滲んでいた。あなたに何かを言って、布を後ろに開いたまま中に入った。それが招かれたということなのか、しばらく判断できなかった。子どもがあなたの袖を引いた。 家の中は薄暗かった。天井に向かって一本の蛍光灯がついていたが、昼の光に慣れた目には最初ほぼ見えなかった。床はセメントを薄く塗ったままで、ところどころ白く粉を吹いていた。 壁際に木の棚がある。プラスチックの容器が四つ。菊の花の絵が描かれたホーロー鍋が一つ。水差しが一つ、蓋が微妙にずれて置かれていた。 奥の土間に続く開口部から、水音と包丁の音が交互に聞こえていた。炭火を使っているらしく、煙の匂いが床の高さから漂ってくる。油の匂いではなかった。魚のような、もう少し深い発酵の匂いが、それに混じっていた。 サリンが何かをつぶしている。石の上に石を叩きつける音だった。レモングラスか何かの繊維が台のふちから垂れ下がっていた。子どもがかたわらに立ち、親指を口に入れたり出したりした。 あなたは土間の入口に立った。鍋の中で何かが動いていた。片手で蓋をずらし、柄の長いスプーンで底をこするようにかき混ぜて、また蓋を戻す。液体の色は黄みがかっていた。ガランガルの根に近い色。根菜か何かが浮いているようにも見えた。 しばらくして、鍋の隣にもう一枚浅い皿が置かれた。刻まれた葉が山になっていた。ノコギリの歯のような葉の輪郭。あなたにはそれが何か最後まで確かめられなかった。 外でバイクの音がした。誰かが戻ってきたらしく、サリンが声を上げた。男の声が返った。 低いプラスチックのテーブルが中央に出された。椅子はなかった。小さなプラスチックのスツールと、折りたたみの椅子が一脚。子どもはすでに床に座っていた。 鍋がテーブルの真ん中に来た。陶器の皿がいくつか。ご飯の炊けた湯気がその周囲に広がった。サリンが木のスプーンを置いた。男が手を洗いながら何かを言った。 あなたはスツールに座った。熱いものの匂いと、発酵した何かの匂いが鼻の正面にある。鍋の蓋が外された。黄色と白と緑が見えた。 スプーンが差し出された。 ---
今日のふらりごはん

料理名

Samlor Kako / サムラー・カコー

この料理について

カンボジアの家庭で週に何度も作られるスープ煮込み料理。魚や豚肉を、ロースト米ペーストとプラホック(発酵魚ペースト)で風味づけしたスープで煮る。特定の季節や祝事に限らず、普通の昼食・夕食に登場する。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
淡水魚(骨付き)または豚肉400gスーパー(鯛のアラ、豚バラ)鯛のアラは骨付きでコクが出る
プラホック(発酵魚ペースト)大さじ1〜2KALDIまたはアジア系食材店なければナンプラー大さじ2で代用。風味差は大きい
ロースト米(カオクア)大さじ2自作可(米を乾煎りして粗挽き)スープのとろみと香ばしさに不可欠
ガランガル(カー)薄切り4〜5枚業務スーパー、冷凍または乾燥生姜で代用可、ただし風味は異なる
レモングラス2本スーパー(冷凍)、KALDI根元を叩いて使う
コブミカン(カフィアライム)の葉5〜6枚KALDI、冷凍品乾燥でも可
ターメリック小さじ1/2スーパー(粉末)色と土台の風味
パームシュガー大さじ1富澤商店、KALDIきび砂糖で代用可
ナンプラー大さじ1〜2スーパー塩味の調整に
ロングビーン(ササゲ豆)100g業務スーパー、アジア系食材店いんげん豆で代用可
青パパイヤまたは冬瓜150gアジア系食材店、冬瓜はスーパーズッキーニでも代用可
バナナの花または茎適量アジア系食材店(缶詰あり)なくてもよい、代用不要
ノコギリパクチー(チャドン・ベーン)1束アジア系食材店青ねぎ+青じそで代用、風味差あり
タイバジル1束スーパー、KALDI普通のスイートバジルでも可
ライム1個スーパー仕上げに絞る
700ml

アレルゲン:魚(プラホック・ナンプラー)、使用する肉による


ソース照合メモ

食材現地語ソース(クメール・英語圏)日本語ソース英語ソース判定
プラホック(発酵魚ペースト)頻出・カンボジア料理教室Instagram「より強い発酵風味」TikTok複数レシピで言及必須
ロースト米(カオクア)料理教室・複数動画で強調journey-cooking.com(ボボー文脈)複数ソース一致必須
ガランガル料理教室Instagram(note.com)note.com クメール料理教室英語レシピ共通必須
レモングラスnote.comクメール料理教室note.com、journey-cooking.com共通必須
コブミカンの葉note.com(ライムの葉)note.com共通必須
ターメリック複数ソース一部言及共通必須
パームシュガーcambodianogohan Instagraminstagram(材料一覧)共通必須
ノコギリパクチーcambodianogohan Instagram「日本なら青ネギ・青じそ代用」明記共通必須(代用可)
バナナの茎・花観察ログ文脈・地域固有言及なし一部のみ地域固有・オプション

この料理を成立させる核

  • プラホック(発酵魚ペースト)を入れること。これを省くと、同じ具材でも別のスープになる。ナンプラーで代用した場合は「サムラー・カコー風」にとどまる
  • ロースト米ペースト(カオクア)でスープにとろみをつけること。デンプンや小麦粉ではなく、乾煎りした米を粗挽きにしたものを使う。これがスープの質感と香ばしさを決定する
  • ガランガル・レモングラス・コブミカンの葉の三つを必ず入れること。この組み合わせがクメール料理の風味の基底になる
  • 仕上げにライムを絞ること。酸味は後から加えるのが前提で、煮込み中には入れない

作り方

  1. カオクアを作る:生米を大さじ2、フライパンで乾煎りし、薄く色がつき香ばしい匂いが出るまで中火で8〜10分炒る。粗めにすりつぶすかミルで砕く(粉にしきらず、粒感が残る程度)
  2. 具材を下ごしらえする:ガランガルは薄切り、レモングラスは根元を包丁の腹で叩き3〜4cm長に切る。コブミカンの葉は中央の筋を折って除く。青パパイヤ(または冬瓜)は3cm角に切る。ロングビーン(いんげん)は4cm長に切る
  3. スープを仕込む:鍋に水700mlを入れ、ガランガル・レモングラス・コブミカンの葉・ターメリックを入れて中火にかける。沸いてきたらプラホック大さじ1〜2を入れてよく溶かす
  4. 肉・魚を加える:沸騰したら魚(または豚肉)を加え、アクを除く。中火で8〜10分煮る
  5. 野菜を加える:青パパイヤ(または冬瓜)→ロングビーン(いんげん)の順に加え、それぞれ2〜3分差をつけて入れる
  6. カオクアを加える:砕いたロースト米を加えてかき混ぜる。スープが少しとろりとしてくる
  7. 調味する:パームシュガー大さじ1、ナンプラーで塩気を整える。ひと煮立ちさせる
  8. 仕上げる:火を止め、タイバジルとノコギリパクチー(または青ねぎ・青じそ)を加える。食卓でライムを絞る

食べ方

茶碗に山盛りのご飯と一緒に食べる。スープは直接すくってかけてもよいし、おかずとご飯を交互に取る食べ方でもよい。食卓にライムを切ったものと生の葉野菜を別皿で出すことが多い。


補足

  • 失敗しやすいポイント:プラホックを入れすぎると塩分が急上昇する。少量から溶かして味見しながら増やすこと。また野菜を入れるタイミングがずれると、柔らかくなりすぎる(特に青パパイヤは崩れやすい)
  • プラホック代用時の風味差:ナンプラーで代用すると発酵感・土台の深みが薄れ、よりさっぱりした味になる。これ自体は「別のスープ」として成立するが、カンボジア固有の風味軸からは離れる
  • 時短バージョン:カオクア(ロースト米)は、市販のロースト米粉(タイ系食材店で入手可)を使うと工程が省ける。なければ市販のきな粉少量と片栗粉を合わせて代用できるが、香ばしさは落ちる
  • 翌日:一晩おくとプラホックの塩分がなじみ、よりまとまった味になる。スープを水で少し伸ばして温め直し、米麺(カノムチン)を入れると朝食の麺料理として食べられる

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