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- 国:日本 - 地域:世田谷区
三軒茶屋の交差点から一本入った路地。アスファルトに細い亀裂が走っている。電柱が斜めに傾き、その根元に自転車が二台、施錠されて重なっている。 あなたは自転車の横を抜ける。塀に沿ってプラスチックの植木鉢が並んでいる。ゴムの木、観葉植物、土が乾いて縁から白くなった鉢。鉢と鉢の隙間から、猫が腹ばいでこちらを見ている。目だけ動く。 路地はそのまま細くなる。右手に一軒、格子の引き戸が開いている。郵便受けは錆びている。表札はない。 犬が鳴いた。 玄関の中から、「どうぞ」という声が聞こえる前に、「すみません、入っちゃって」という声がした。市場の帰りに傘を貸してくれた女性の声だ。 戸を開けると三和土が狭い。靴が四足、向きが揃っていない。傘立てに傘が三本。濡れていない。上がり框の木が艶を失っている。 居間に通される。 六畳か八畳か、区別がつかない。ローテーブルが中央に一台。テレビがついている。音量は低い。画面では宝飾品の通販をやっている。 押し入れの引き戸が半分開いていて、段ボール箱が見えている。ふすまの下レールにほこりが溜まっている。 「ちょっと待ってて」と声がして、女性は台所に消える。 台所との境は引き戸一枚で、完全には閉まっていない。隙間から音が出てくる。換気扇が回る音。鍋の蓋が振動する低い音。引き出しが開き、金属が触れ合う。 五分ほどたつと匂いが来る。 醤油だ。醤油が煮詰まって焦げる一歩手前の匂い。それにみりんが混じっている。甘い揮発が来て、次に出汁の底の方の匂いが来る。 ローテーブルの上に急須とコップが置かれる。麦茶だ。常温で出てくる。 テレビが通販から夕方のニュースに変わる。女性が台所から顔を出す。「もうちょっとだから」と言って引っ込む。 隣の家から子どもの声がした。壁越しに反響している。次いで上の階で何かを引きずる音がした。この建物が二階建てかどうか、外から見たとき確認しなかった。 換気扇の音が止まった。 台所からフライパンを布巾で持つ音、皿が引き出されるプラスチックの音。足音が複数回往復する。 ローテーブルに皿が並べられていく。 白い楕円の皿。色が濃い。茶色と黒の中間の色で、表面が光っている。形は不均一で、大きいものと小さいものが同じ皿に盛られている。角ばったものと丸みを帯びたものが混在している。 次にご飯。茶碗が二つ。 次に小皿。白い。漬物が二切れ。 箸が置かれる。割り箸ではない。 湯気はもう出ていない。少し冷めている。 「どうぞ」 女性が向かいに座る。自分の茶碗を引き寄せて、箸を持つ。 ---
今日のふらりごはん

料理名

筑前煮 / ちくぜんに

この料理について

鶏肉と根菜類を炒めてから甘辛い出汁で煮含める料理で、東京を含む関東の家庭では煮物の基本として定着している。「がめ煮」とも呼ばれる。平日の副菜として作られることが多く、量を多めに作って翌日以降に食べ残すことが前提になっていることが多い。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
鶏もも肉300gスーパー全般骨付きを使う地域もあるが、家庭では骨なしが多い
ごぼう1本(約150g)スーパー全般
れんこん150gスーパー全般旬は秋〜冬
にんじん1本(約150g)スーパー全般
こんにゃく1枚(約200g)スーパー全般白でも黒でも可
干ししいたけ4〜5枚スーパー全般・富澤商店戻し汁を使う(重要)
里芋3〜4個(約200g)スーパー全般冷凍里芋で代用可
サラダ油大さじ1スーパー全般
醤油大さじ3スーパー全般
みりん大さじ3スーパー全般
大さじ2スーパー全般
砂糖大さじ1スーパー全般
だし汁200ml干ししいたけの戻し汁+鰹だしを合わせる

アレルゲン:醤油・みりんに小麦を含む場合あり(製品による)。鶏肉(鶏卵とは別)。


ソース照合メモ

食材・要素現地語(日本語)ソース英語ソース判定
鶏もも肉筑前煮の一般的な記述で必出chicken thigh として複数サイト記載◎必須
ごぼう根菜として必出(「せたがや根菜汁」も傍証)burdock root として記載あり◎必須
れんこん必出lotus root として記載あり◎必須
こんにゃく必出konjac として記載あり◎必須
干ししいたけの戻し汁現地語ソースで「だしに使う」と強調一部ソースに記載あり◎必須(核)
にんじん必出carrot として記載あり◎必須
里芋多くのレシピに登場taro として記載あり◎必須
炒めてから煮る工程現地語ソースで「炒り煮」という名でも言及stir-fry before simmering として共通◎必須(核)
砂糖・みりんの甘み全ソース共通全ソース共通◎必須
花形にんじん一部ソースにのみ登場一部に言及オプション(見た目)

この料理を成立させる核

  • 炒めてから煮る:最初に油で鶏肉と野菜を炒める工程が「筑前煮」の語源に関わる調理法。この工程を省くと別の煮物になる
  • 干ししいたけの戻し汁をだしに使う:水で代用すると出汁の土台が変わる。この汁を捨てない
  • 醤油・みりん・酒・砂糖の甘辛バランス:どれかを省くと味の構造が崩れる。甘みと塩みが同時に存在していること
  • 根菜を複数組み合わせる:ごぼう・れんこん・にんじん・里芋のうち最低3種が入ること。1種だけでは成立しない
  • こんにゃくの存在:食感と味の対比を作る。省くと単調になる

作り方

  1. 干ししいたけを水200mlに1時間以上浸けて戻す。戻し汁は捨てない。しいたけは石づきを取って半分に切る
  2. ごぼうはよく洗い、皮をこそげて乱切りにする。水に5分さらして水気を切る
  3. れんこんは皮をむき、乱切りにする。酢水(水に酢少量)に5分さらして水気を切る
  4. にんじんは皮をむき、乱切りにする
  5. 里芋は皮をむき、一口大に切る。塩少量(分量外)でもみ洗いしてぬめりをとる
  6. こんにゃくは手でちぎって一口大にする(断面が大きくなり味が入りやすい)。熱湯で2〜3分下茹でして水気を切る
  7. 鶏もも肉を一口大に切る
  8. フライパンまたは鍋に油を中火で熱し、鶏肉を皮目から炒める。表面が白くなったら取り出す
  9. 同じ鍋でごぼう・れんこん・にんじん・里芋・こんにゃくを中火で2〜3分炒める
  10. 鶏肉を戻し入れ、干ししいたけを加える。酒を加えてひと混ぜし、アルコールを飛ばす
  11. だし汁(しいたけの戻し汁+鰹だし)200ml、醤油大さじ3、みりん大さじ3、砂糖大さじ1を加える
  12. 落し蓋をして中火で10分煮る
  13. 落し蓋を取り、弱火〜中火で煮汁が少なくなるまでさらに10〜15分煮て、照りを出す
  14. 火を止めて10分ほど置く(冷める過程で味が入る)

食べ方

ご飯の副菜として小皿か大皿に盛る。熱々よりも少し冷めた状態の方が味が入って食べやすい。まとめて作って翌日に食べることが一般的で、作りたてより翌日の方が味がなじんでいることが多い。


補足

  • 失敗しやすいポイント:煮汁が多いまま終わると薄味になる。最後に煮汁を半分以下に詰めること。里芋は煮すぎると崩れるので、火加減を見ながら調整する
  • 代用について:干ししいたけの戻し汁は「だしの核」なので省略しない。鰹だしは顆粒でも可(本場との風味差は小さい)。里芋が手に入らない場合は冷凍里芋で代用可(食感はやや水っぽくなる)。こんにゃくを糸こんにゃくにすると食感が変わる(どちらも正解の範囲内)
  • 時短バージョン:市販の白だしを使い、醤油・みりん・酒の割合を減らして調整可能。冷凍里芋と水煮ごぼうを使えば下処理時間が大幅に短縮できる
  • 翌日の楽しみ方:冷蔵で3〜4日保存可。翌日はだしが全体に回り、味が均一になる。少量残った場合は刻んで炊き込みご飯の具にすることがある
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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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