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- 国:ブラジル連邦共和国 - 地域:アマゾナス州タパウア市。プルス川の支流タパウア川沿いに位置する、人口約2万人の内陸河川集落。マナウスから南西へ約800キロ。道路は事実上なく、移動手段は船か小型機。 - 気候・地形:熱帯雨林気候。年間降水量2000〜3000ミリ。乾季(6〜10月)でも湿度は高く、雨季には川が数キロ単位で氾濫する。樹冠が途切れた場所には直射日光が垂直に落ちる。 - 暮らしの基本:経済の中心は漁業とマニオク(キャッサバ)農業。電力は発電機依存で停電は日常。冷蔵庫がある家は少数派。市場は船で届く物資に依存し、川の水位が食料の値段を左右する。 ---
木製の桟橋は濡れていた。雨は二十分前に止んでいたが、板の隙間からまだ川の水が滲んでいた。足の裏に伝わるのは、水を含んだ柔らかい振動だ。プルス川系の支流——幅は広いところで三百メートルほど——が茶色く流れている。川面に空の白い光が乱反射している。 川沿いの土手に、ペンキが剥げた水色の木造家屋が並んでいた。高床式で、柱の高さはおそらく一・五メートル。雨季の増水に合わせた寸法だ。屋根はトタン。壁の隙間から、虫の羽音が出たり入ったりしている。 桟橋の端で、男が魚を捌いていた。四十代か五十代、半袖のサッカーシャツ、素足。まな板はプラスチックで、端が黄色く変色している。魚の頭を鉈で落とすたびに、鱗が光を弾いて飛んだ。 男はあなたを見た。あなたが会釈すると、男は顎を上げた。ポルトガル語で何か言った。聞き取れたのは「タンバキ」という単語だけだった。 そのとき、隣の家屋からどんという音がした。柱ごと揺れる音。続いてスペイン語ではない言葉が飛んだ。子どもの笑い声。男は振り返って何か返した。笑っていた。 男は手のひらで土手を示した。上がっていいということらしかった。 木の階段は三段。手すりはなく、端を持つと軋んだ。床は板張りで、踏むたびに軽く沈んだ。天井は低い。入ってすぐ左に、プラスチックの椅子が四脚、テーブルが一つ。テーブルの上にはリモコンと、聖人の像と、小さなファンが置かれていた。ファンは回っていた。電気は来ていた。 台所は奥にあった。壁と天井の境目に隙間があり、外の光が斜めに入っていた。コンロはガスで、ボンベは床に直置き。鍋は二つ。片方は大きく、蓋をされていた。もう片方では水が沸いていた。 女性がいた。三十代、髪をゴムで束ねている。足元はビーチサンダル。鍋の蓋を外した。白い湯気が上がった。においは魚と、酸味のある何か液体。川の匂いに似ているが違う。発酵した何か。 鍋の中を見た。川魚の切り身が数枚、黄色みがかったスープの中に浮いていた。白い根菜のようなものと、青いものが沈んでいた。 しばらくして、テーブルに深皿が置かれた。木製の器に、白い粒状のものが盛られていた。男が席に着いた。子どもが二人、椅子を引いて座った。下の子は五歳くらい、上の子は十歳前後。ハンモックで遊んでいたらしく、シャツが片方だけ出ていた。 上の子が粒状のものを深皿の縁に集めた。女性が鍋から直接、器に黄色いスープと魚を盛った。 スープの表面に油が丸く浮いていた。魚から出たものか、別に加えたものかはわからなかった。酸味と、土っぽい何かと、もう一種類、言語化できない匂いがあった。 男が木製のスプーンを手に取った。子どもが真似た。女性はまだ立ったままで、ガス台のそばで自分の器に盛っていた。 あなたの前にも深皿が置かれた。白い粒と、黄色いスープと、柔らかそうな魚の切り身。 男がスプーンを持ったまま、あなたを見た。顎で皿を示した。 ---
今日のふらりごはん

料理名

Caldeirada de Tambaqui com Farinha / タンバキの煮込みとマニオク粉

この料理について

カルデイラーダはアマゾナス州の河岸集落で日常的に作られる川魚の煮込みで、タンバキ(Colossoma macropomum)はアマゾン川流域で最も重要な食用淡水魚のひとつ。マニオク粉(ファリーニャ・デ・マンジオカ)を添えるのがこの地域の普通の食べ方で、ご飯のかわりにもなる。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
タンバキ(または鯛・ブラックバス・ティラピア)600〜800g(切り身)業務スーパー・魚屋(代用)白身で脂があり、骨ごと煮る切り身が理想
トマト(完熟)2個(中)スーパー全般
玉ねぎ1個(大)スーパー全般
青ピーマン(またはパプリカ)1個スーパー全般
にんにく3〜4片スーパー全般
青ネギ(葉ネギ)2本スーパー全般
コエントロ(パクチー)の葉1つかみスーパー・カルディ・業務スーパー省くと風味が大きく変わる。苦手な場合は半量に
ライム(またはレモン)1個スーパー全般下味と仕上げに使う
小さじ1〜2
植物油大さじ2スーパー全般サラダ油可
400〜500ml
ファリーニャ・デ・マンジオカ(マニオク粉・粗挽き)適量(添え用)カルディ・業務スーパー・Amazon・富澤商店「ファロッファ用」でも可。なければ代用案を補足参照

アレルゲン:魚(白身魚)。パクチー(コエントロ)はごく稀にアレルギー報告あり。

ソース照合メモ

食材・工程現地語ソース(PT)英語ソース日本語ソース判定
タンバキ使用vivala.com.br・Instagram(Feira da Panair言及)一般的な記述あり記載なし必須(地域固有)
トマト・玉ねぎ・ピーマンのベース複数PT料理サイトで言及共通旭化成レシピで類似構成必須
コエントロ(パクチー)PT複数ソースで強調共通記載なし必須(省略不可)
ライムの下味PT複数ソースで言及共通記載なし必須
ファリーニャ・デ・マンジオカの添えtiktok(chibé・farinha molhada言及)・vivala共通記載なし必須(地域固有)
唐辛子(ピメンタ)一部PTソースのみ一部記載なしオプション

この料理を成立させる核

  • 川魚を骨ごと切り身で煮ること。骨からの出汁がスープの骨格になる。切り身から骨を外してから煮ると別物になる
  • コエントロ(パクチー)を仕上げに加えること。加熱しすぎると香りが飛ぶ。火を止めてから乗せる
  • ライムで下味を付けること。魚臭さを消すためではなく、スープの酸味の一部をここで作る
  • ファリーニャ・デ・マンジオカを添えること。スープに浸して食べるのが現地の食べ方。これが「主食」の役割を担っており、これを省くと煮込みだけの皿になり、別の食事になる
  • とろみ剤を加えない。スープはあくまでサラサラとした、魚と野菜の出汁ベース

作り方

  1. 魚の切り身にライム果汁半個分・塩小さじ1を揉み込み、15〜30分置く
  2. トマト・玉ねぎ・ピーマンを粗みじんに切る。にんにくはみじん切り
  3. 鍋に植物油を入れ中火にかけ、にんにくを炒める。香りが出たら玉ねぎを加え、透明になるまで3〜4分炒める
  4. トマト・ピーマンを加えてさらに3分。トマトが崩れてペースト状になったら水を加える
  5. 沸騰したら魚の切り身を入れる。弱火〜中火で10〜15分。魚が崩れないよう、かき混ぜず煮る
  6. 塩で味を整える。火を止めてからコエントロの葉をちぎって乗せる。残りのライムを絞る
  7. ファリーニャ・デ・マンジオカを別の器に盛って添える

食べ方

深皿にスープと魚を盛り、横にファリーニャを置く。食べながら少しずつファリーニャをスープに浸すか、スプーンでスープをかけて食べる。ファリーニャが水分を吸って少し柔らかくなったところを食べるのが一般的。魚の骨は口の中で外して皿の端に置く。

補足

  • 失敗しやすいポイント:魚を入れてからかき混ぜると身が崩れてスープが濁る。切り身は動かさずに煮ること
  • 代用について:タンバキの代わりに鯛の切り身(骨付き)が最も近い。ティラピアは身がパサつくが入手しやすい。切り身より骨付きを選ぶと出汁の深みが増す
  • ファリーニャの代用:入手できない場合、粗挽きのとうもろこし粉(ポレンタ用)を乾煎りしたものが代用になるが、食感と香りは異なる。もち麦やオーツも代用にはなるが、風味の差は大きい
  • コエントロが苦手な場合:半量にするか、青ネギの葉のみに変えることはできる。ただし香りの輪郭は相当変わる
  • 翌日:スープをそのまま温め直す。魚がほぐれてスープに溶け込み、味が丸くなる。翌日のスープをご飯にかけて食べるのも家庭での定番
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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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