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- 国:ネパール - 地域:ガンダキ州バグルン郡、バレン村周辺。カリガンダキ川流域から南に入った中山間地帯。標高は概ね1000〜1500m圏 - 気候・地形:亜熱帯〜温帯の移行帯。モンスーンは6〜9月に集中し降水量が多い。冬は乾燥し朝晩に冷え込む。急傾斜の棚田と段丘が連続する。平地はほぼない - 暮らしの基本:棚田でコメ・キビ・トウモロコシを作る農業世帯が主体。豚・鶏を庭先で飼う。薪または農業廃材を燃料にする。近隣の市場へはバイクか徒歩。電力は来ているが不安定 ---
道は石を積んで均した幅80センチほどの踏み固められた面で、その両脇に玉ねぎの葉を干した束が2〜3本、石垣に立てかけてある。足の裏に土の固さが来る。坂が続く。 左手の棚田はすでに刈り取りが済んでいて、根だけが泥に刺さったまま立っている。その向こうの尾根が霞んでいる。空気に湿り気がある。雨の気配ではなく、朝の霧が抜けきれていない。 集落に入る手前の石段で、プルナという名の男と行き合う。40代前半。手に持ったビニール袋に青菜が詰まっていて、茎の先が袋の外に出ている。彼は地元の小学校で用務員をしている。妻と母親と子ども2人の5人暮らしだという。 袋の青菜について訊こうとしたところで、何かが足元を過ぎる。鶏だった。羽の茶色い、中くらいの鶏が石段の隙間から出てきて、坂を下に向かって走っていく。プルナが舌打ちに似た音を出して、石段を3段駆け上がる。鶏は塀の陰に消えた。彼は小さく息を吐いた。そのまま「来い」という手ぶりをした。 家の入り口は木の框が斜めに傾いている。柱は煤で黒い。土間の床に豆の莢の殻が散っていて、踏むと乾いた音が出る。 台所に入ると煙が低く漂っている。薪を囲む三石の竃に鉄の鍋が乗っていて、鍋の縁から蒸気が細く上がっている。母親が鍋の蓋を取らずに指で木の柄を押さえている。指に布を巻いている。 妻のマヤが奥から盆を運んでくる。30代。布を腰に巻いた上からセーターを着ている。土間の隅に鉄の皿が伏せて重なっていて、その横に赤いプラスチックのコップが2個並んでいる。 プルナが持ってきた青菜は、妻が石の上で刻み始める。まな板ではなく平たい石。刃は内側に反った形の鎌に近い刃物で、石の上で野菜を押さえながら刃を前後に引く。切るたびに青い匂いが立つ。 壁は赤土を塗ってある。窓は木枠で、ガラスでなく透明な薄いプラスチックが張ってある。その一枚が割れていて、そこから外の光が細く差し込んでいる。 鍋の蓋が揺れ始める。母親が蓋を取る。白い湯気がひとかたまりで上がり、すぐに天井の低い台所に広がる。豆の煮える匂いと、何か焦げた脂の匂いが混ざる。 別の小鍋が竃の端に置かれている。こちらは音がする。何かが油の中で動いている音。鍋の縁が黒い。母親が何かを投げ入れた。はじける音。すぐに別の匂いが来る。にんにくに近い、だがもう少し土っぽいもの。 外で雨が降り始めた音がする。硬い土に当たる音。プルナが外を確認してから戻り、木の腰掛けを引いて座るよう促す。 床に近い高さの台が食卓代わりになっている。鉄の皿が置かれる。まず白米。次に鉄の小椀に茶色い液体。その横に、別の椀がひとつ。 椀の中に緑が見える。青菜。その下に、灰色がかった茶色のもの。形が不揃い。ところどころ濃い焦げ色がついている。表面に油が光っている。湯気は細いが続いている。 母親が自分の分の皿に米を盛る。プルナが両手を合わせるでもなく、ただ皿に手を伸ばす。 マヤがあなたに小椀を差し出す。受け取る。重い。 ---
今日のふらりごはん

料理名

Dal Bhat Tarkari / ダルバート・タルカリ

この料理について

ネパールの農村世帯が毎日2回(昼と夜)食べる基本の膳立てで、白飯(バート)、豆のスープ(ダル)、野菜の炒め煮(タルカリ)の3点で構成される。ガンダキ州の中山間地帯では地場の豆と季節の青菜を使うため、都市部のものとは食材の顔が異なる。祭や祝事の料理ではなく、年間を通じた日常の食事である。

材料(3〜4人分)

食材分量日本での入手備考
マスール・ダル(赤レンズ豆)200gスーパー・KALDI・富澤商店皮なし赤レンズ豆。浸水不要
水(ダル用)900ml
ターメリック小さじ1スーパー
適量
サラダ油またはギー大さじ2サラダ油はスーパー、ギーはKALDI・富澤商店ギーのほうが現地の風味に近い
にんにく3片スーパー薄切り
生姜1片(親指大)スーパー細切りまたはすりおろし
乾燥赤唐辛子2本スーパー丸ごと使用
クミンシード小さじ1KALDI・富澤商店・Amazonない場合は省略可だが風味が変わる
玉ねぎ1個スーパー薄切り
トマト1個スーパー粗みじん
コリアンダーパウダー小さじ1KALDI・富澤商店なければ省略可
青菜(ほうれん草・小松菜・からし菜など)200gスーパー現地ではサグ(からし菜系)が多い
白米2合スーパー
レモン汁またはライム汁大さじ1スーパー仕上げ用

アレルゲン:特定原材料等の主要品目への該当なし。ギーを使う場合は乳製品に注意。

ソース照合メモ

食材・工程現地語ソース(ネパール語)英語ソース日本語ソース判定
赤レンズ豆(マスール・ダル)YouTube農村映像で確認(豆スープ)Reddit・YouTube共通ダルバートとして言及必須
ターメリック(ダルに加える)農村調理映像で確認Reddit「ひとつまみのターメリック」と明記必須
クミンシードのタルカ(油で炒める)農村映像で煙の立つ小鍋確認Western Nepal村料理映像で確認必須
乾燥赤唐辛子(タルカに加える)複数映像で確認英語サイト共通必須
青菜タルカリネパール語・英語映像共通で「Pork Curry with Greens」「サグ」英語映像で確認ティラキタでサグ炒め言及必須
ギー(仕上げ)農村映像で確認英語ソースで言及推奨(サラダ油で代用可)
トマト英語YouTube映像で確認共通必須
レモン・アチャールChukauni・アチャール言及ダルバートにアチャールと明記推奨(省略可)

この料理を成立させる核

  • タルカ(油の香り付け)を最後に作ってダルに注ぐこと。油を熱してクミンシード・乾燥唐辛子・にんにくを順に投じ、その油ごとダルに加える。この工程を省くとダルは「豆の煮汁」にとどまる
  • ターメリックをダルの煮始めに加えること。仕上げに加えるのは現地では行わない
  • 3点(米・ダル・タルカリ)が同時に卓上に並ぶこと。ダルだけ、米だけでは「ダルバート」と呼べない
  • 青菜タルカリは歯ごたえを残さず柔らかく煮ること。農村の竃調理では長く火にかける。しゃきしゃきに仕上げるのは現地スタイルではない
  • ギーをダルの仕上げに少量落とす行為は必須ではないが、現地では当然のように行われる

作り方

【ダル(豆スープ)】

  1. 赤レンズ豆を水で2〜3回洗い、水900mlと共に鍋に入れる。ターメリック小さじ1と塩少々を加えて中火にかける
  2. 沸騰したらアクをすくい、弱火にして20〜25分煮る。豆が完全に溶けてとろりとするまで煮続ける。途中水が減ったら補う。最終的にスープ状(ポタージュより少しゆるめ)になればよい
  3. 塩で味を整える
  4. タルカを作る:別の小鍋またはフライパンにギー(またはサラダ油)大さじ1を入れ強火で熱する。クミンシードを加え、10秒ほどで泡立ちパチパチ音がしたら、乾燥赤唐辛子2本・薄切りにんにく2片を加える。にんにくが薄く色づいたら(30秒ほど)、そのまま熱い油ごとダルの鍋に注ぎ入れ、蓋をして10秒待つ
  5. 蓋を取ってかき混ぜる。仕上げにレモン汁を加える

【青菜タルカリ】

  1. フライパンにサラダ油大さじ1を中火で熱し、薄切りにんにく1片・細切り生姜・乾燥赤唐辛子1本を入れて30秒炒める
  2. 薄切り玉ねぎを加え、透明になるまで5〜7分炒める
  3. 粗みじんのトマトを加え、崩れるまで3〜4分炒める。コリアンダーパウダー・ターメリック少々・塩を加える
  4. 洗って一口大に切った青菜を加える。蓋をして弱火で10〜15分蒸し煮にする。竃のように長くかけるほど現地に近い仕上がりになる
  5. 水気が残りすぎる場合は蓋を取って飛ばす。塩で整える

【盛り付け】

  1. 白米を皿に盛り、ダルを小椀に、青菜タルカリを別の椀か皿の端に盛る。3点を同時に卓上に出す

食べ方

現地では右手の指で米とダルを混ぜながら食べる。ダルを米にかけ、タルカリを少量ずつ合わせて口に運ぶ。スプーンを使っても構わない。食事中にダルを追加でかけ足すのが普通で、椀が空になったら継ぎ足す。

補足

  • 失敗しやすいポイント:タルカを作るタイミングで油が足りないか温度が低いと、クミンの香りが出ない。油は充分に熱してからクミンを入れること。クミンが焦げると苦みが出る。投入から注ぎ入れまでを素早く行う
  • 代用提案の風味差:ギー→サラダ油は問題なく代用できるが、乳脂の丸みは出ない。クミンシード→クミンパウダーは香りが別物になるため推奨しない(省いたほうが無難)。からし菜→ほうれん草は甘みが出て現地より穏やかな味になる
  • 省いてはいけない要素:タルカ工程(クミンシード+熱い油をダルに注ぐ)。ここだけは代用も省略もできない
  • 時短バージョン:圧力鍋を使うとダルが8〜10分で仕上がる。Redditでも圧力鍋使用が言及されている
  • 翌日の楽しみ方:ダルは翌日に味が深まる。冷蔵保存して温め直す際に水を少し足す。タルカリは翌日に味がなじみ、むしろ食べやすくなる
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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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Dal Bhat Tarkari / ダルバート・タルカリ — ガンダキ州 / ネパール — ふらりごはん