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- 国:インドネシア - 地域:リアウ州インドラギリ・ヒリル県、クリタン郡(Keritang, Indragiri Hilir, Riau)。スマトラ島東部の低地、インドラギリ川流域に近い内陸部。 - 気候・地形:熱帯雨林気候。年間を通じて高温多湿、雨季と乾季の区別は明確でない。標高はほぼゼロに近い沖積低地で、周辺にはサゴヤシ・ゴム農園・ヤシ油(CPO)農園が広がる。河川や湿地が生活圏に隣接している。 - 暮らしの基本:マレー系が多数を占める農村地帯。主要産業はサゴ採取、ゴム栽培、ヤシ農園労働。日常の移動は道路よりも河川に依存してきた歴史があり、現在は舗装道路が一部に整備されている。食事はご飯を主食とし、川魚・淡水魚・サゴ加工食品が家庭の食卓の中心を担う。イスラーム信仰が生活に根付いている(豚肉不使用)。 ---
道は赤土で、乾いた表面にタイヤの跡が筋になっている。脇にはゴムの木が等間隔に並び、幹の下部に白い傷跡が斜めに走っている。空気は重く、葉の間から光が斑点になって落ちている。遠くでエンジン音がして、消える。 舗装が途切れるあたりで、木製の橋を渡る。橋板は隙間があって、足を踏みおろすたびに軋む。下の水は茶色く、流れはほとんどない。橋のたもとに、細い竿を持った男が腰かけている。ゴム草履に、藍色のサロンを膝の上まで巻いている。 男はあなたを見て、顎で先を指す。何かを言ったが、聞き取れない。もう一度、同じ言葉。 坂を上ると、プランク材で建てた高床式の家が見える。屋根はトタン。壁に窓が一つ、木の鎧戸が片方だけ開いている。軒下に衣服がロープで干してあり、子供のシャツが風で半回転している。 縁側で老人と話していた女性があなたに気づく。四十代ほど。プラスチックのサンダル、花柄のバジュ・クルン。手に濡れた布を持っている。男が何か言うと、女性は短く答えて、あなたに手招きをした。 家の中に入る。床は木で、踏むたびに低い音がする。正面に小さな棚があり、コーランのカバーがかかった本が置いてある。壁に時計。プラスチックの椅子が三脚。天井に扇風機が一台、最小の速度で回っている。 台所は家の奥、半戸外になっている。屋根はあるが、壁の一面がない。石板のかまどに火が入っており、木の燃える匂いがする。鍋が一つ、蓋をされていて、隙間から白い蒸気が細く出ている。 女性がかまどの前にしゃがむ。長い木べらで鍋の中をかき回す。鍋の底から何かが当たる感触があるのか、べらの角度を変えて確認している。蓋を少し持ち上げると、黄みがかった液体が見える。魚の匂いと、何か青い葉のようなものの匂いが出てくる。 子供が二人、台所に入ってきてあなたを見てすぐ出ていく。外で笑い声。扇風機が止まる。女性は気にしない。また扇風機が動き始める。 テーブルはプラスチック製で、脚が一本だけ短い。布を折りたたんで下に挟んである。ご飯が大きな皿に盛られ、真ん中に置かれる。別の皿に何かが盛られてくる。白みがかった黄色。とろみのある汁。その中に灰色がかった白い塊が沈んでいる。 女性が椅子を引く。 ---
今日のふらりごはん

料理名

Gulai Ikan Patin / グライ・イカン・パティン


この料理について

スマトラ島リアウ地方を中心に食べられている淡水魚(パティン/パンガシウス)のグライ(ターメリック・ベースのスパイスを使ったココナッツミルク煮)。グライはインドネシアやマレーシア全土に広がる料理形式だが、川魚を使い、セレマカン(asam kandis もしくは asam gelugur)と呼ばれる地元産の酸味素材を加えるのがリアウ地方の家庭の特徴。週に複数回、平日のご飯として作られる。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
パティン(パンガシウス)切り身、またはナマズ・ティラピア600g業務スーパー(冷凍パンガシウス切り身)・アジア食材店淡水魚であることが重要。鯛・サーモンで代用すると風味が変わる
ターメリック(生)またはパウダー生:2cm角 / パウダー:小さじ1スーパー(パウダー)、KALDI・富澤商店(生)生を使うと色と香りが強い
ガランガル(生良姜)2cm角KALDI・富澤商店・アジア食材店なければ生姜で代用可(風味は明確に変わる)
レモングラス2本スーパー(冷凍・乾燥)、KALDI(生)根元を叩いてから使う
カフィアライムの葉(ジェルック・プルット)4〜5枚KALDI・アジア食材店・Amazon乾燥品でも可
赤唐辛子(生またはサンバルベース)3〜5本スーパー辛さは量で調整
玉ねぎ(シャロット推奨)中3個(シャロット8個)スーパー(シャロット:業務スーパー)シャロットの方が甘みが出る
にんにく3片スーパー
ターメリックリーフ(daun kunyit)1〜2枚アジア食材店・Amazon(冷凍)なければ省略可(香りに差が出る)
ココナッツミルク400mlスーパー・KALDI缶詰で可
asam kandis または asam gelugur(タマリンド)asam kandis 3〜4枚 / タマリンドペースト 小さじ1.5タマリンド:KALDI・業務スーパー・アジア食材店酸味を加える素材。タマリンドで代用すると酸の質が変わるが機能は近い
小さじ1〜1.5スーパー
サラダ油またはパーム油大さじ2スーパー(サラダ油で可)

アレルゲン:魚(パティン・ナマズ等)、ナッツ類はなし、ごまはなし。ココナッツミルク使用(ツリーナッツアレルギー要確認)。

ソース照合メモ

食材・要素インドネシア語ソース(一般情報)英語ソース日本語ソース判定
淡水魚(ikan patin)リアウ地方グライの代表食材として記述多数パンガシウスとして言及あり「川魚のグライ」として言及あり必須
ターメリックグライの基本スパイスとして全ソース共通共通共通必須
ガランガルインドネシア語ソース頻出英語ソースにも記載記載あり必須
ココナッツミルクグライの定義要素として全ソース共通共通共通必須
asam kandis / asam gelugurリアウ・スマトラ地方ソースで頻出、地域固有性が高い一部に言及あり言及なし必須(地域固有)
カフィアライムの葉インドネシア語ソース頻出英語ソース多数記載あり必須
レモングラス共通共通共通必須
ターメリックリーフインドネシア語ソースに頻出一部のみ言及なし必須(現地語固有)

この料理を成立させる核

  • 淡水魚を使う:海水魚では「グライ・イカン・パティン」にならない。パンガシウス(パティン)またはナマズ類が本来の魚
  • ターメリックを十分に使う:仕上がりの黄色はターメリックによるもの。薄いと別の料理になる
  • cocoanut milk(kok santen)を加えて煮る:水だけで煮るのはグライではなく別の調理形式になる
  • asam kandis / asam gelugurで酸味を加える:これがリアウ家庭料理としての地域性を決定する要素。タマリンドで代用は可能だが、酸味の質は変わる
  • ターメリックリーフを入れる:現地語ソースで強調されており、グライ・パティンの香りの核の一つ。省くと香りのプロファイルが変わる
  • 沸騰後は弱火でゆっくり煮る:強火でぐつぐつさせると魚が崩れ、ミルクが分離する

作り方

  1. 魚の切り身を水洗いし、表面に塩(分量外)を薄く擦り込み10分置く。水で流してキッチンペーパーで拭く。
  2. ミキサーまたはすり鉢に、玉ねぎ(シャロット)・にんにく・赤唐辛子・ターメリック・ガランガルを入れ、ペースト状にする(粗くても可)。
  3. 鍋に油を入れ中火で温め、2のペーストを炒める。油が分離し、香りが立つまで5〜7分。
  4. レモングラス(根元を包丁の腹で叩いたもの)・カフィアライムの葉・ターメリックリーフを加えてさらに1〜2分炒める。
  5. ここでasam kandis(またはタマリンドペーストを水50mlで溶いたもの)を加える。
  6. ココナッツミルク400mlと水200mlを加えて混ぜ、中火で沸騰直前まで温める。
  7. 魚の切り身を静かに入れ、塩で味を調える。沸騰したら弱火にして蓋をせずに12〜15分煮る。
  8. 魚に火が通り、汁がやや濃くなったら火を止める。

食べ方

白ご飯(ナシ・プティ)に合わせて食べる。汁をご飯にかけて食べるのが家庭での一般的なスタイル。テンペ(大豆の発酵食品)や野菜の炒め物と一緒に食卓に並ぶことが多い。手で食べる場合は右手のみを使う。

補足

  • 失敗しやすいポイント:ペーストの炒めが足りないと生臭さが残る。油が透明に分離して香りが立つまで炒めること。ココナッツミルクを強火で沸騰させ続けると分離するので注意。
  • 代用について:ガランガルを生姜で代用すると、土のような丸みのある香りがなくなりシャープな味になる。asam kandisをタマリンドで代用すると酸味は出るが、地域固有のほのかな苦みが出ない。ターメリックリーフを省くと草のような清涼感が薄れる。
  • 時短バージョン:ペーストを市販のグライペースト(KALDI・アジア食材店で入手可能)に替えると工程が大幅に短縮できる。ただしasam kandisの酸味は別途加えること。
  • 翌日:冷蔵保存して翌日に温め直すと、スパイスが馴染んでより深い味になる。魚は崩れやすいので、温め直しは弱火でゆっくり行うこと。
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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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