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- 国:トルコ共和国 - 地域:イスタンブール市 サルイェル区 アヤザア地区(マルマラ地方) - 気候・地形:地中海性気候と温帯気候の境界。夏は乾燥して暑く、冬は雨が多い。ボスポラス海峡の北西丘陵地帯に位置し、起伏がある。標高はさほど高くないが風が通りやすい。 - 暮らしの基本:イスタンブール都市圏の北端に近い住宅地。マンション・集合住宅が丘の斜面に並ぶ。バルコニー菜園を持つ世帯が多い。近隣に市場(pazar)が立つ。公共交通はメトロと路線バスが軸。 --- #
舗装のひび割れた坂道を上がる。左手のコンクリート塀に、誰かが水をやり忘れた鉢植えが並んでいる。土が完全に乾いている。ペットボトルをホースの代わりに立てたままの仕掛けが、空っぽになって傾いている。 丘の上から下を見ると、赤錆色の屋根が段々に重なっている。路面の継ぎ目に猫が三匹。二匹はもう動かない。一匹だけ、こちらの足音に耳を立てる。 露台のある二階建て集合住宅の前に、折りたたみの木の椅子と小さなプラスチックテーブルが出ている。テーブルの上にチャイグラス。中身は半分残っていて、もう冷めている。 坂を下りたところの角に、週二回の露天市がある。今日は残り物の時間帯で、木のコンテナに葉物野菜が二束だけ。トマトの箱が一つ。砂で汚れた人参が紙袋に詰められて積んである。 隣で荷物をたたんでいた売り子の男が、あなたに向かって「Bekleyin」と言い、路地の先に向かって何か大声で呼びかける。三十秒後、エプロン姿の女性が路地の奥から顔を出す。 女性はアルタン、五十代前半。手には小麦粉が白くついている。男は何かを早口で言い、あなたのほうを顎でしゃくる。女性はあなたを見て、何も言わずに路地の奥へ引き返す。振り返らないが、歩調が遅くなる。ついてきていいということらしい。 路地は狭い。両側の壁から水道管が突き出ている。地面はコンクリートと土が混在している。三メートルほど進むと、鉄製の外扉がある。塗装は薄緑。ところどころに錆が浮いている。 中は六畳ほどの前庭。隅に積まれた段ボール箱。物干し台には薄手のコットンのシャツが二枚。まだ湿っている。脇に小さなガスボンベ。 階段を上がる。踊り場のリノリウムが剥がれかけていて、歩くたびに端がめくれる。二階の扉は開いている。 台所は廊下から直接見える。白いホーロー鍋が二つ、コンロにかかっている。手前の鍋は蓋がずれていて、そこから白い蒸気が一本、細く上がっている。奥の鍋はもっと静かだ。時々、ことりと音がする。 壁に貼られたカレンダーは先月のもの。冷蔵庫の扉に磁石がたくさんついている。冷蔵庫の側面に、子どもが描いた絵がセロテープで貼ってある。船の絵。 居間と台所の境に、布地を張った長ソファ。背もたれに薄いクッションが三つ。テレビは消えている。テレビ台の下に、大きいサイズの運動靴が脱ぎ散らかされている。 アルタンが台所に戻る。エプロンで手を拭きながら、引き出しをあける音。スプーンが触れ合う金属音。また鍋をかき混ぜる。 「Otur, otur」と言いながら、アルタンが手を振る方向に折り畳みの椅子がある。座面が擦り切れている。あなたは座る。 テーブルはコンパクトな木製で、クロスは格子柄のビニールコーティング。隅に塩入れと輪ゴムの束と、乾電池が一本。 台所でざくざくと切る音。数分後、水が流れる。また蒸気が上がる匂いが変わる。バターが何かに当たったときの音。細かく跳ねる油の音。 玄関のほうで人の声。男の子が二人、ランドセルより大きいリュックサックを床に叩きつけるように下ろす。アルタンが大声で何かを言い、二人は靴を持って廊下の奥に消える。 台所の鍋のうち手前のものが、ことことという音から、ぶつぶつという音に変わる。脂分を含んだ何かが焦げる手前の匂い。小麦と、乳製品と、それから何か、粘度のある液体が熱されているときの匂い。 アルタンが深皿を二枚持って出てくる。縁が黒くなった陶器の皿。皿の上に湯気がある。液体と固体の間のような、重みのある白。表面にオレンジ色の油が浮いている。その上に赤みがかった粉が薄くかかっている。 皿が目の前に置かれる。スプーンが横に添えられる。 アルタンが「Buyurun」と言う。 --- #
今日のふらりごはん

料理名

Mercimek Çorbası / 赤レンズ豆のスープ

この料理について

トルコの家庭で週に何度も作られる日常食。特別な日ではなく、学校から子どもが帰ってくる平日の夕方に鍋にかけてある種類の料理。イスタンブールのアパートからアナトリアの農村まで、作り方の基本はほとんど変わらない。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
赤レンズ豆200g(約1カップ)KALDI、富澤商店、Amazonで入手可水洗い必須。皮なしタイプを使う
玉ねぎ1個(中)スーパーで入手可
にんじん1本スーパーで入手可省いても可だが甘みが変わる
じゃがいも1個(小)スーパーで入手可とろみを出すための素材。省略不可
にんにく2片スーパーで入手可
トマトペースト大さじ1スーパー・KALDIで入手可濃縮タイプを使う
バター大さじ1.5スーパーで入手可最後の仕上げに使う。省略不可
オリーブオイル大さじ2スーパーで入手可炒め用
水またはチキンブイヨン1〜1.2Lブイヨンを使うと深みが増す
クミンパウダー小さじ1スーパー・KALDIで入手可風味の核。省略不可
小さじ1〜味を見ながら調整
乾燥赤唐辛子フレーク(pul biber)小さじ1/2〜KALDI、業務スーパーで入手可仕上げのバターに加える。チリフレークで代用可だが辛みの質が変わる
レモン半個スーパーで入手可食卓で絞る。省略不可

アレルゲン:乳製品(バター)、セロリ(ブイヨン使用時は確認)


ソース照合メモ

食材・工程現地語ソース(トルコ語)英語ソース日本語ソース判定
赤レンズ豆(kırmızı mercimek)✓ 全レシピに共通必須
玉ねぎ炒め必須
じゃがいも(とろみ源)✓ 多数のレシピに登場✓(一部省略あり)必須(地域によるが標準的)
にんじん標準・省略可
トマトペースト必須
クミン必須
バター仕上げ + pul biber✓ 現地レシピで強調△(記載薄い)必須(日本語ソースで軽視されがちだが現地では核心)
レモン(食卓で絞る)必須
ミキサーでの裏ごし・撹拌必須(なめらかにする工程)

この料理を成立させる核

  • 赤レンズ豆を使うこと。茶・緑レンズ豆では別の料理になる
  • ミキサーまたはハンドブレンダーで完全に撹拌すること。具が残るスープではなく、均一になめらかなポタージュ状にする
  • 仕上げのバター炒め:小鍋またはフライパンにバターを溶かし、クミンと pul biber を30秒ほど熱してから、椀に注いだスープの上にかける。この工程を省くと別物になる
  • 食卓でレモンを絞ること。酸味は調理中ではなく、食べる直前に加える

作り方

  1. 赤レンズ豆をたっぷりの水で3回ほど洗い、水が濁らなくなるまですすぐ。
  2. 厚手の鍋にオリーブオイルを入れ、中火にかける。みじん切りにした玉ねぎを加え、透き通るまで7〜8分炒める。
  3. にんにく(みじん切り)を加え、30秒炒める。トマトペーストを加え、さらに1〜2分、焦がさないように混ぜながら炒める。
  4. 一口大に切ったにんじんとじゃがいも、洗った赤レンズ豆を鍋に加える。水(またはブイヨン)1Lを注ぐ。
  5. 強火にして沸騰させ、アクをすくう。弱火〜中弱火に落とし、蓋を少しずらして30〜35分煮る。レンズ豆とじゃがいもが完全に崩れるまで。
  6. 火を止め、ハンドブレンダーで完全になめらかになるまで撹拌する(ブレンダーがなければ、荒熱を取ってからミキサーにかける)。水分量を見て、濃すぎる場合は少量の湯を加えて調整する。
  7. 塩とクミンパウダーで味を調える。再び弱火にかけ、2〜3分温める。
  8. 仕上げのバターソース:小さなフライパンにバターを溶かし、中火にかける。バターが泡立ったら pul biber(または赤唐辛子フレーク)を加え、30秒ほど熱してすぐ火を止める。
  9. スープを深皿に盛り、仕上げのバターソースをスプーン1〜2杯、表面にかける。

食べ方

深皿のまま出す。食べる直前にレモンを絞る。トルコのパン(エクメック)を浸して食べるのが一般的。家によっては乾燥ミントを振る場合もある。


補足

  • 失敗しやすいポイント:撹拌が不十分だと、粒の食感が残ってしまう。豆が完全に溶けるまで煮てからブレンダーにかけること。また、仕上げバターは鍋に入れず、器に盛ってから上にかけること(鍋に入れると色が沈む)。
  • 代用提案:pul biber の代わりに市販の韓国産チリフレークを使うと辛みは出るが、スモーキーさがやや落ちる。バターをオリーブオイルに換えると軽くなるが、仕上げの風味が変わる。
  • 時短バージョン:圧力鍋を使う場合、工程5を加圧10分に短縮できる。
  • 翌日の楽しみ方:冷蔵で2〜3日持つ。冷やすと固まるので、温め直す際に湯を足してのばす。翌日は味が落ち着いてさらに飲みやすくなる。

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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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