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- 国:スロバキア - 地域:Region of Bratislava / ブラチスラヴァ
舗装の継ぎ目が隆起している。コンクリートブロックを何度も補修した跡で、端が白く欠けている。トラムのレールが南北に走り、路面に押しつぶされた銀杏の実が点々と残っている。十一月。気温は五度を下回っている。 バスから降りると、タバコと排気ガスが混じった冷気が鼻腔に当たる。向かいの棟は十二階建てのパネルマン。ベランダに物干し台が出ていて、濃紺のトレーナーが風でわずかに動いている。一階の窓枠に花の絵が描かれたセロファンが貼ってある。 通りに面した小さな食料品店の軒先に、リンゴの入った木箱が積まれている。値札は手書きで「0.49€/kg」。店の中から、オイルヒーターの乾いた熱気とビニール袋の匂いが漏れ出している。 角で、マルティナ・クラールという女性に話しかけられる。四十代半ば。灰色のウールコートにエコバッグ、白い運動靴。スーパーの袋を両手に下げている。「ここの建物は全部同じに見えるでしょう」と彼女は言い、番号を指差す。棟の入口に「17C」とスプレーで書いてある。彼女の隣の住人が日本人と聞いたことがあるとかなんとか、聞き取れない部分が多い。 エレベーターは動いていた。金属の扉に「OTIS」と刻印がある。内側に誰かが黒マジックで何か書いたのをまた誰かが消した跡がある。四階で扉が開く。廊下は蛍光灯が一本切れていて、端が薄暗い。隣の部屋から低いテレビの音が聞こえる。 玄関ドアを入ると、正面に薄い木製のシューズラックがある。スニーカーが二足、ゴム長靴が一足。壁に子供の絵が画鋲で留めてある。犬ではなく猫の絵。靴を脱ぐよう促される前に、すでに彼女は上靴に履き替えている。 リビングは十五畳ほど。窓際に観葉植物が四鉢並んでいる。葉が重なって一部が黄色くなっている。ソファは深緑、クッションが三つ。テレビは薄型だが縁が厚い旧式。テーブルの上に教科書らしきものと、ボールペンが一本。息子が帰ってくるとかなんとか。 台所から音がし始める。鍋が鍋に当たる金属音。水が流れ、止まる。フライパンに油が入ったような音。次いで、たまねぎを切るときの水気と、熱した油に何かが投入される低い音。 しばらくして匂いが変わる。バターと、乳製品の酸味と、じゃがいもが蒸される湯気。 テーブルに白い布が敷かれる。皿が二枚。スプーンとフォーク。食パンが切って小皿に置かれる。マルティナがなにか呟きながら鍋ごと持ってくる。鍋の縁に白い汚れが残っている。何度も使われた鍋だとわかる。 皿に盛られると、白っぽいとろみのついた液体の中に、不揃いな形のかたまりが沈んでいる。表面に脂の輪が浮いている。湯気がまっすぐ立ち上り、すぐ折れる。乳酸系の酸味と、スモークの匂いが混じって広がる。 マルティナがスプーンを置き、うなずく。 ---
今日のふらりごはん

料理名

Kapustnica / カプストニツァ(スロバキア風ザワークラウトスープ)

この料理について

スロバキアの家庭で、特にブラチスラヴァを含む西部スロバキアで日常的に作られるスープ。発酵キャベツ(ザワークラウト)を豚肉またはスモーク腸詰とともに煮込んだもので、寒い季節の普段のごはんとして食卓に上がる。クリスマスイブにも食べられるが、平日の昼食にも頻繁に作られる。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
ザワークラウト(汁ごと)400g業務スーパー、KALDI、富澤商店缶詰・袋詰め可。汁を捨てない
スモークソーセージ(キールバサ系)200g業務スーパー(ポーランド系)、ハラール系肉屋燻製感の強いものを選ぶ。ウインナーで代用可だが風味差大
豚バラ肉またはスペアリブ200gスーパー全般骨付きが望ましい。出汁が出る
乾燥ポルチーニまたは乾燥しいたけ20g富澤商店、KALDI、Amazonポルチーニが本来。しいたけは風味が変わるが代用可
玉ねぎ1個スーパー全般
ラード(または植物油)大さじ1.5業務スーパー(ラード缶)ラードが本来。サラダ油代用で風味差あり
小麦粉大さじ1スーパー全般ルウ(ザープラシュカ)用
パプリカパウダー(スイート)小さじ2スーパー全般ハンガリー系の甘口が望ましい
乾燥マジョラム小さじ1KALDI、富澤商店省くと香りが変わる。必須ハーブ
キャラウェイシード小さじ1/2富澤商店、Amazon省くと別の料理になる
乾燥赤唐辛子またはチリフレーク少量スーパー全般辛さは調整可
にんにく2片スーパー全般
塩・黒胡椒適量スーパー全般
サワークリーム大さじ2〜3成城石井、KALDIなければプレーンヨーグルト(水切り)で代用。風味差あり
1〜1.2L

アレルゲン:小麦(ルウ)、乳製品(サワークリーム)、豚肉(豚バラ)


ソース照合メモ

食材・要素現地語ソース(sk/cs)英語ソース日本語ソース判定
ザワークラウト(汁ごと)cookslovak:キャベツ酸漬け必須と記述Wanderlust:定番具材として明記Reddit翻訳源・大使館サイト経由で確認◎必須
スモークソーセージcookslovak:燻製肉類の記述ありTasteAtlas Facebook投稿で確認ブログ系で言及◎必須
キャラウェイシードcookslovak系レシピに頻出英語圏スロバキア料理サイトで必須扱い一部言及あり◎必須(核)
マジョラム現地語レシピに異口同音で登場英語ソースでも頻出言及少ないが英語で確認◎必須(核)
ラード使用現地語ソースで標準的英語ソースは油で代用可と記述言及なし必須(代用可)
サワークリーム仕上げcookslovak:仕上げに入れると記述英語ソース複数で確認言及あり◎必須
乾燥キノコ(ポルチーニ)現地語レシピに頻出英語ソースでも確認言及なし◎必須
パプリカパウダー現地語に頻出(ハンガリー文化圏の影響)英語ソースで確認言及なし◎必須

この料理を成立させる核

  • ザワークラウトを汁ごと使う:汁の酸味がスープ全体の骨格になる。水で洗い流すと別物になる
  • キャラウェイシードを入れる:これがスロバキア・中欧のザワークラウト料理を他の酸っぱいスープと区別する最大の要素
  • マジョラムを入れる:複数の現地語ソースで「必ず入れる」と強調されているハーブ
  • スモークの香りを持つ肉類を使う:生の豚肉だけでは風味が平坦になる。ソーセージか燻製肉のどちらかが必須
  • ルウ(ザープラシュカ:小麦粉とラードを炒めたもの)でとろみをつける:スープをサラサラのままにしない。このとろみが食感の核
  • サワークリームで仕上げる:酸味の二段構えが料理のバランスを決める。省くと別の料理に近づく

作り方

  1. きのこを戻す:乾燥ポルチーニを150mlのぬるま湯に30分浸ける。戻し汁は捨てない
  2. 肉を下煮する:豚バラ肉またはスペアリブを鍋に入れ、水1Lで中火にかける。沸騰したらアクを取り、弱火で20分煮る。肉を取り出し、食べやすく切る。煮汁はとっておく
  3. 玉ねぎを炒める:別の鍋か同じ鍋にラードを中火で溶かし、みじん切りの玉ねぎを加えて透明になるまで炒める(約5〜7分)。つぶしたにんにくを加え、さらに1分
  4. パプリカを加える:火を弱めてパプリカパウダーを加え、焦がさないように30秒炒める
  5. 具材を合わせる:豚肉の煮汁、戻したポルチーニと戻し汁、ザワークラウト(汁ごと)、スライスしたスモークソーセージ、切った豚肉を加える。キャラウェイシード、マジョラム、赤唐辛子を入れる
  6. 煮込む:中火で蓋をして20〜25分煮込む
  7. ルウを作る:小さなフライパンにラード大さじ1/2と小麦粉を入れ、弱火でキツネ色になるまで炒める(ザープラシュカ)。煮汁を少量加えてのばし、スープに戻し入れる
  8. 仕上げる:さらに5〜10分煮て塩・黒胡椒で調味する。火を止める直前にサワークリームを加え、よく混ぜる(沸騰させない)

食べ方

スープ皿に盛り、厚切りのライ麦パンまたは白パンと一緒に食べる。スープ自体が主食に近い位置づけで、昼食の一品として単品で出されることも多い。


補足

失敗しやすいポイント

  • サワークリームを加えた後に強火にかけると分離する。必ず火を弱めてから加えること
  • ザワークラウトの塩分量はブランドによって大きく異なる。塩は最後に調整する
  • キャラウェイシードは種のまま入れる(すりつぶさない)のが一般的

代用提案の風味差

  • ポルチーニ→乾燥しいたけ:うまみは出るが、土っぽさ・樹木系の香りがなくなり東欧感が薄れる
  • ラード→サラダ油:コクと丸みが落ちる
  • スモークソーセージ→市販のウインナー:燻製香が弱く、スープの骨格がやや平坦になる。その場合、スモークパプリカパウダーを小さじ1/4加えると補完できる
  • サワークリーム→水切りプレーンヨーグルト:酸味は出るが脂肪分が少ないためコクが落ちる

時短バージョン 豚バラを省き、スモークソーセージのみにする。工程2を省略でき、調理時間を30分短縮できる。うまみは落ちるが家庭での平日版として成立する

翌日の楽しみ方 翌日は味が落ち着いて酸味と燻製香が丸くなる。温め直しはごく弱火で、サワークリームを入れる場合は再度仕上げに加える

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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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