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- 国:カナダ - 地域:ブリティッシュコロンビア州 / バンクーバー
バーナビーとバンクーバーの境界に近い通りは、アスファルトが濡れている。雨は止んでいるが、葉がまだ滴を切っている。低い雲が山の稜線を隠している。歩道のコンクリートに落ち葉が張り付いている。 通りに面した家々は、二階建ての木造が多い。外壁はヴィニールサイディング、灰色か白か、くすんだ青。玄関先にプランターを置いている家がある。プランターの土が黒く湿っている。 角の家の前で、自転車のタイヤに空気を入れていた男性がいた。四十代半ば、フィリピン系、Tシャツの上に厚手のフランネルシャツを羽織っている。名前はロミオといった。あなたが地図を見ていると、声をかけてきた。行き先を告げる前に、「うち来るか」と言った。聞き取りにくかったが、そういうことだった。 玄関のドアを開けると、床はラミネートフローリング。上に薄いラグが敷いてある。靴を脱ぐ場所は玄関の内側で、靴が七足ほど積み重なっている。壁にカレンダーが貼ってある。フィリピンの航空会社の名前が入っている。 居間にテレビがある。音量が大きい。ニュースか天気予報か。ソファには子供用のブランケットが丸まっている。コーヒーテーブルの上にリモコンと、プラスチックの容器のフタが置いてある。 キッチンとリビングはひとつながりだ。シンクの上に蛍光灯がついている。妻のグロリアが鍋をかき混ぜている。五十代、髪をうしろでまとめている。鍋は厚手のステンレス。直径が大きい。火は中火。何かが煮えている音。ぐつぐつ、ではなくじっくりとした低い音。 鍋から蒸気が上がっている。酢の匂いが先に来る。次に、動物性の脂のにおい。何の肉かはわからない。ニンニクを炒めた残り香がある。 十三歳くらいの子供がダイニングの椅子に座ってタブレットを見ている。グロリアが何か言うと、タブレットを閉じてコップを四つ並べた。 テーブルはプラスチックのクロスが敷かれている。白地に小さな花柄。ご飯が電気炊飯器からよそわれた。日本製の炊飯器だ。ふたを開けると白い湯気が天井に向かった。 鍋の中身がサービングボウルに移された。茶色い液体に、肉の塊と月桂樹の葉が沈んでいる。表面に油が浮いている。色はかなり濃い。醤油の色に近い。隣に、白いご飯の茶碗が置かれた。 ロミオが椅子を引いてあなたに座るよう言った。グロリアはすでに鍋をシンクに持っていっている。子供がスプーンを配っている。 テーブルの上で、茶色い汁が皿の縁に少し垂れた。グロリアが布巾で拭いた。全員が席についた。 ---
今日のふらりごはん

料理名

Adobo / アドボ(チキンまたはポーク)

この料理について

アドボはフィリピンの家庭で日常的に作られる煮込み料理で、特定の祭事や祝い事とは無関係に平日の食卓に登場する。酢と醤油を軸にした酸味のある煮汁が特徴で、冷蔵庫のない時代に保存食として発達した経緯があるとされる。バンクーバーのフィリピン系家庭では、故郷の地域ごとのバリエーション(酢の種類、唐辛子の有無など)がそのまま持ち込まれており、「家庭の数だけレシピがある」料理でもある。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
鶏もも肉(骨つき)または豚バラ肉800gスーパー全般骨つきの方が出汁が出る。骨なしでも可
白米酢またはスキャンス酢大さじ6〜8(約90〜120ml)スーパー全般本場はサガリ(サトウキビ酢)を使う地域もある。米酢で代用可。風味はやや穏やかになる
醤油(フィリピン産または薄口)大さじ4〜5KALDI、業務スーパー、Amazonフィリピン醤油(Silver Swan等)は日本醤油より塩気が強い。日本の濃口醤油の場合は大さじ4で様子をみること
ニンニク6〜8片スーパー全般潰す。みじん切りにしない
月桂樹の葉(ローリエ)3〜4枚スーパー全般省略するとかなり風味が落ちる
黒粒コショウ小さじ1スーパー全般潰さずに丸ごと使う
大さじ4〜6酢の酸味を調整する
サラダ油大さじ1スーパー全般肉を焼く用

アレルゲン:大豆(醤油)。鶏・豚のいずれかを使用。

ソース照合メモ

食材・工程現地語ソース(比語・英語フィリピン系)英語ソース日本語ソース判定
酢(白米酢またはサトウキビ酢)◎(Datu Puti, Silver Swan等のブランド名で頻出)◎(white vinegar or cane vinegar)必須
醤油(フィリピン醤油)◎(toyo, Silver Swan soy sauce)必須
ニンニク(潰す)◎(bawang, crushed)必須
月桂樹の葉(ローリエ)◎(dahon ng laurel)必須
黒粒コショウ◎(paminta)必須
砂糖△(一部レシピのみ)オプション
唐辛子◎(一部地域のみ、ビコール地方)地域固有・オプション
肉を最後に焼きつける工程◎(複数ソースで「sear after simmering」)核の工程として必須に近い

この料理を成立させる核

  • 酢と醤油の比率が「酢多め」であること。酢:醤油はおよそ1.5:1〜2:1。酢が少ないとアドボの酸味の骨格が失われる
  • ローリエと黒粒コショウを丸ごと使うこと。粉末コショウに替えると仕上がりの香りが変わる
  • ニンニクを潰す(みじん切りにしない)こと。大きめに潰した状態で煮込むことで、強烈に前に出ず全体に溶け込む
  • 煮込んだ後に肉を引き上げ、フライパンで表面を焼きつける工程。これを省くと味は出るが、「アドボらしい」焦げた香りと表面のコクが失われる
  • 白いご飯と一緒に食べること前提の塩気と酸味のバランス。単体では「しょっぱい・酸っぱい」と感じる程度が正しい

作り方

  1. 鶏もも肉(または豚バラ)を大きめの一口大に切る。骨つきの場合はそのまま使う。
  2. 深めの鍋に、酢・醤油・潰したニンニク・ローリエ・黒粒コショウ・水を合わせる。
  3. 肉を鍋に入れ、全体を混ぜてから蓋をして中火にかける。
  4. 沸いたら弱火に落とし、蓋をしたまま25〜30分煮込む。途中で一度上下を返す。
  5. 肉が柔らかくなったら、肉だけ鍋から取り出す。煮汁は鍋に残す。
  6. 別のフライパンに油を熱し、取り出した肉の表面を中火〜強火で焼きつける。各面1〜2分、焦げ目がつく程度。
  7. 焼きつけた肉を鍋の煮汁に戻し、弱火で5分ほど絡める。
  8. 器に盛り、煮汁をかける。ローリエと粒コショウはそのまま盛りつけに混じっていて構わない(食べるときに除ける)。

食べ方

白いご飯の上に煮汁ごとかけて食べる。スプーンとフォークを使う。フィリピンの家庭では茶碗ではなく平皿にご飯を盛ることが多い。

補足

  • 失敗しやすいポイント:酢を火にかけた直後は酸味が強く感じられるが、煮込むうちに丸くなる。途中で味見して「酸っぱすぎる」と感じても、砂糖を加える前に10分待つこと。
  • 代用提案の風味差:サトウキビ酢(スキャンス酢)が手に入ればより本場に近い丸みが出る。業務スーパーやアジア系食材店で入手可能。米酢でも成立するが、少し穏やかな仕上がりになる。
  • フィリピン醤油について:Silver SwanやDatu Putiは日本醤油より塩気が強く色が薄い。日本の濃口醤油で代用した場合、塩気が変わるので大さじ3〜4から始めて調整する。
  • 翌日の楽しみ方:翌日の方が味が染みる。温め直す際に少量の酢を加えると酸味が戻る。冷蔵で3〜4日保存可能。低酸度の状態で置きすぎないこと(特に夏場)。
  • 時短バージョン:圧力鍋で工程4を10〜12分に短縮できる。焼きつけ工程は省かないこと。
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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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