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- 国:ブラジル連邦共和国 - 地域:サンパウロ州東部、モジ・ダス・クルーゼス市(サンパウロ市街から東へ約60km、セハ・ド・マル山脈の麓) - 気候・地形:熱帯性高地気候。標高800m前後の台地と丘陵地が続く。雨季(10〜3月)は午後から激しいスコールが来る。日中30℃を超えても夜は20℃を下回ることがある - 暮らしの基本:農業(野菜・茶・柿)と小規模畜産が混在する郊外都市。サンパウロ市への通勤者も多く、市場と住宅街が隣接する。日系移民の入植が早く、いまも日系農家が野菜・果物を卸している ---
午後2時すぎ、道は舗装されているが端は砕けていた。アスファルトの割れ目からタチアオイに似た草が出ている。赤土の斜面が左手に迫り、その上にレンガ造りの家が並ぶ。屋根はオレンジ色の陶器瓦か、銀色の波板。ほとんどの家にタンクが乗っていた。黒い球形のポリエチレン製で、屋根の上にひとつか、ふたつ。 あなたは市場の駐車場の縁石に腰をおろしていた。バッグを下ろしたとき、脇から声がかかった。 「ここ、暑いよ。」 ポルトガル語の単語だけが拾えた。日系の顔つきの女性が荷物のネットバッグを持ったまま立っていた。60代に見えた。日差しが肩に当たっている。 名前はマルガリーダ・サトウ。夫は溶接工で、月曜から金曜は隣の市に出ている。息子が1人、独立して市内にいる。今は1人で暮らしているとスマートフォンの翻訳アプリを介して理解した。 彼女は歩き出した。あなたは3メートル後ろをついた。 道はゆるく下っていた。コンクリートブロックの塀が続き、上に細いガラスの破片が埋め込まれている。金属の門扉をがたんと引くと中庭があった。砂利の上に柿の木が1本。葉が茂っていて実はまだ青かった。 玄関はそのまま台所に続いていた。段差はない。床はテラコッタ色のタイル。踏むと冷たかった。天井に蛍光灯が2本。片方がわずかに点滅していた。 シンクの横にLPガスのボンベが置いてある。コンロは2口。左のバーナーに深い鍋がかかっていた。蓋は閉まっているが鍋のふちから蒸気が少し出ていた。右のバーナーは消えている。 冷蔵庫は白。扉にマグネットが4つ。ウチワの形、フルーツの形、名前のわからない観光地の形。引き出しの上に醤油の小瓶があった。 マルガリーダは鍋の蓋を持ち上げた。蒸気が天井に向かった。豆の匂いがあがってきた。ベーコンか、豚の脂に似たものが混じっていた。鍋の中は茶色がかった橙色の液体で、表面に脂の輪が浮いていた。豆は崩れかかっている。 「少し待って。」 ガスを弱火に落とす。木べらでかきまぜた。底から白いものがあがってきた。それが何かはすぐにはわからなかった。 奥の部屋からラジオの声が聞こえた。ニュースではなく音楽だった。音量は低い。 テーブルはプラスチック製で四人がけ。布のテーブルクロスが敷いてある。白地に青い格子柄。椅子は全部違うデザインだった。木製が2脚、パイプ椅子が2脚。 マルガリーダが棚を開けた。白い粉が入ったビニール袋を取り出し、フライパンに油をひいた。ベーコンの切れ端を入れると音がした。香りが変わった。脂と煙。粉を入れ、木べらで炒める。粉の色が変わっていく。黄色がかった茶色になったところで火を止めた。 皿が4枚テーブルに並んだ。自分用に2枚使うつもりのようだった。 白飯がよそわれた。米粒は細長い。豆の鍋から液体ごとよそわれた。フライパンから炒めた粉。それぞれが盛られていくあいだ、あなたの椅子は引かれたままだった。 マルガリーダが座った。あなたも座った。 スプーンが置かれた。 ---
今日のふらりごはん

フェイジョン・カリオカ with ファロッファ

Feijão carioca com farofa / フェイジョン・カリオカとファロッファ

この料理について

フェイジョン・カリオカ(茶豆の煮込み)は、ブラジルの家庭で週に複数回食卓に上がる最も日常的な料理のひとつで、サンパウロ州の家庭では白飯とセットで出されることが多い。フェジョアーダ(祝祭的な黒豆の肉煮込み)とは別物で、これは普段の月曜から日曜の皿だ。ファロッファ(キャッサバ粉の炒め物)は同じ食卓に常備される付け合わせで、食感と風味の骨格を担う。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
フェイジョン・カリオカ(茶色の斑入り豆)300g業務スーパー、Amazon、ハラール系食材店乾燥豆。缶詰不可(水煮だと煮汁の旨味が出ない)
水(豆の浸水用)たっぷり一晩浸水
水(煮込み用)1.5〜2L
ベーコン(厚切り)80gスーパー全般ブロックベーコンを1cm角に切る
にんにく4〜5片スーパー全般すりつぶすか包丁で潰す
玉ねぎ1/2個スーパー全般みじん切り
小さじ1〜1.5最後に調整
サラダ油大さじ1
ローリエ2枚スーパー全般
ファロッファ用:
ファリーニャ・デ・マンジョカ(キャッサバ粉)200gKALDI、富澤商店、Amazon「farinha de mandioca」で検索。生キャッサバ粉・粗挽きタイプが理想
ベーコン50gスーパー全般細切り
バター大さじ1スーパー全般マーガリン代用可
少々
パセリ(あれば)適量スーパー全般生のイタリアンパセリ推奨

アレルゲン:小麦なし。乳製品(バター)。豚肉(ベーコン)。


ソース照合メモ

食材・工程現地語ソース英語ソース日本語ソース判定
フェイジョン・カリオカ(茶豆)サンパウロ州で白豆でなくこの豆が使われると複数記述複数レシピで確認ラテン大和・クックパッドに記述あり必須
にんにく・玉ねぎのベーコン炒め(refogado)ポルトガル語圏レシピの共通基本操作として確認共通共通必須(省略禁止)
ローリエ複数ポルトガル語レシピで確認確認記述あり必須
塩のみで味つけ(スパイスなし)「肉の旨味とニンニクと岩塩の塩味のみ」と明記共通HowTravelに明記必須
ファリーニャ・デ・マンジョカ(キャッサバ粉)のファロッファサンパウロの日常食卓に必須の付け合わせとして複数確認確認ラテン大和・noteに記述必須
白飯(arroz)arroz+feijãoの組み合わせはブラジル家庭の基本として全ソースで確認共通共通必須
オレンジスライス添え複数ソースで確認確認newt.netに記述オプション(フェジョアーダでの習慣。日常のフェイジョンでは任意)

この料理を成立させる核

  • 豆の煮汁ごと食べる。水煮缶や豆だけの仕上がりにしない。煮汁がとろりとした「ソース」になることがこの料理の本体
  • refogado(レフォガード)を必ず作る:ベーコン→にんにく→玉ねぎの順に油で炒め、この炒めた脂と香りを豆に加える。この工程を省くと平板な豆の煮物になる
  • ファリーニャ・デ・マンジョカを炒めたファロッファを別皿で出す。これがないと「ブラジルの日常の食卓」にならない
  • スパイスを使わない。ハーブも最小限(ローリエのみ)。調味料は塩だけ。ここにガラムマサラやクミンを入れると別の料理になる
  • 白飯・フェイジョン・ファロッファの三点セットで1食

作り方

【フェイジョン・カリオカ】

  1. 豆を水でよく洗い、たっぷりの水に一晩(8〜12時間)漬ける。
  2. 浸水した豆の水を捨て、新しい水1.5Lとローリエを入れ、圧力鍋なら中火で20分加圧(または普通鍋で豆が柔らかくなるまで1〜1.5時間)煮る。豆が指でつぶれる柔らかさになればよい。
  3. 別の厚手鍋かフライパンにサラダ油を中火で熱し、ベーコンを炒める。脂が出てきたらにんにくを加えてさらに炒める。にんにくが色づいてきたら玉ねぎを加え、透明になるまで炒める(これがrefogado)。
  4. 煮あがった豆を煮汁ごと3の鍋に加える。全体を混ぜ、弱火で10〜15分煮込む。
  5. 豆の一部をスプーンの背で潰すか、鍋の縁に押しつけて崩す。これで煮汁にとろみがつく。塩で味を調える。

【ファロッファ】

  1. フライパンにバターを中火で溶かし、ベーコンを炒める。
  2. ベーコンから脂が出たらファリーニャ・デ・マンジョカを加え、木べらで絶えずかき混ぜながら炒る。粉が均一に黄金色〜薄茶色になったら火を止める(焦げると苦くなる)。
  3. 塩で味を調え、刻んだパセリがあれば混ぜる。

食べ方

白飯を皿に盛り、隣にフェイジョンを煮汁ごとよそう。ファロッファは別の小皿か皿の端に盛り、食べながら豆と混ぜるか、飯の上にかける。スプーンで食べる。


補足

  • 失敗しやすいポイント:ファロッファは火が強いと一瞬で焦げる。中火でつきっきりでかき混ぜること。粉が多少不均一な色のほうが食感がある
  • フェイジョン・カリオカの代用:日本では手に入りにくい場合、金時豆で代用可能。風味はやや甘みが強くなり、本来の土っぽさは出ない
  • ファリーニャ・デ・マンジョカの代用:入手不可の場合は粗めのパン粉(乾燥)で代用できるが、食感はより軽くなり、キャッサバ独特のざらっとした口当たりは出ない。この代用は風味の変化が大きいため、可能な限りAmazonまたはKALDIで本物を入手することを勧める
  • 時短:圧力鍋使用で全工程1時間以内に収まる。豆の浸水を省くと煮崩れにくくなるため、浸水はできるだけ守ること
  • 翌日:フェイジョンは翌日さらにとろみが増して旨味が深まる。冷蔵で3日保存可

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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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