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- 国:カザフスタン - 地域:Jetisu Region
八月の昼過ぎ。 アスファルトは表面が白く乾いている。道の端にポプラが三本、等間隔に立っている。葉は細く、風のたびにざわっと裏返る。乾いた音だ。日差しは頭のまっすぐ上から来ていて、影は足もとにだけある。 あなたは地区の小市場の端を歩いている。コンクリートの低い台の上に、スイカが積まれている。隣の台にトマト、その隣に白玉ねぎ。売り手の男が台の下に足を引っ込めて、携帯電話を見ている。 市場の外れに水汲み場がある。鉄管から細い水が出ている。あなたが手を出すと、冷たい。指先がすぐ痺れる。 その水汲み場の横で、五十代の男が自転車のチェーンをいじっている。青いジャンパーを着ている。七月にしては重そうな素材だ。男の名前はヌルランという。向かいの集合住宅の三階に妻と息子夫婦と住んでいて、定年まであと二年、地区の水道管理事務所に勤めていると、あなたのたどたどしいロシア語に対して、ゆっくりしたロシア語で答えてくれた。 チェーンが直らない。ヌルランは立ち上がって自転車を手で押した。「食ったか」と聞いた。あなたが首を横に振ると、男はあごで集合住宅の方向を示した。 階段は薄暗い。手すりは鉄で、塗装が所々剥げて赤茶けた下地が出ている。三階まで上がると踊り場に靴が六足並んでいた。革靴二足、スニーカー二足、子供用のサンダルが二足。ドアは鉄製で、内側のベルを押すとすぐ開いた。 廊下に灯りはついていない。奥から光が入っている。台所の方向から、油の弾ける音が断続的に聞こえる。低い音と高い音が交互に来る。 居間には絨毯が敷いてある。赤と紺の幾何学模様。ただし端が一カ所ほつれていて、糸が二センチほど出ている。低いテーブルの脚に段ボールが挟んである。壁際に古いテレビ。音声は消えていて、カザフ語の字幕の入ったニュースが流れている。天井から蛍光灯が一本吊られている。 ヌルランの妻、ライハン(五十二歳)が台所から顔を出した。白いエプロンをかけていて、両手に油がついていた。何か言った。ヌルランが「座れ」と言った。 あなたは絨毯の上に座った。 台所の音が変わった。鉄鍋を置く重い音。水が入る音。次第にぐつぐつという低い音が加わった。 ヌルランの息子ダニャル(二十七歳)が奥の部屋から出てきた。Tシャツと短パン。赤ちゃんを腕に抱いている。赤ちゃんは眠っている。ダニャルはあなたの隣に、やや距離を取って座った。何も言わなかった。テレビを見ていた。 外で車の音がした。それが過ぎると、また静かになった。ポプラの葉の音が窓から入ってきた。 十分ほどして、ライハンが盆を持ってきた。深いボウルが三つ。次に浅い皿に平らなものが積み重なって運ばれてきた。最後にガラスのポットに入ったお茶。砂糖は角砂糖で、小皿に六個。 ボウルから湯気が上がっている。色は薄い琥珀色。表面に油の輪が小さく浮いている。脂の匂いが鼻の奥に入ってくる。肉の匂いと、少し焦げたような匂いが混ざっている。平らなものは幅広で、白く、縁がくっついているところがある。 ライハンが何か言った。ヌルランが「食え」と言った。 ---
今日のふらりごはん

料理名

Бесбармак / ベシュバルマク(Beshbarmak) カザフ語:беcбармак 日本語:「五本指の料理」


この料理について

カザフスタン全土で日常的に作られる料理だが、ジェティス州やイリ川流域では羊肉または牛肉を使うことが多い。ゆでた肉を幅広の手打ち麺(カズィンダ)にのせ、煮汁(ソルパ)を注いで食べる。結婚式や葬儀にも出るが、来客があった際や週末の昼食として家庭で普通に作られる料理でもある。


材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
羊肉(骨つきもも・肩)または牛肉800g〜1kgハラール系肉屋、業務スーパー(牛)、Amazon(冷凍ラム)骨つきの方がスープに深みが出る
2.5〜3L
玉ねぎ(スープ用)1個国内スーパー皮ごと入れてもよい
黒胡椒(ホール)5〜7粒国内スーパー
適量
月桂樹の葉2枚国内スーパー
【麺生地】強力粉または中力粉300g国内スーパー強力粉の方がもちっとした食感
1個
小さじ1/2
水(生地用)80〜100ml加減しながら加える
【仕上げ】玉ねぎ(飾り用)2個国内スーパー薄い輪切りまたはくし切り
黒胡椒(挽き)適量

アレルゲン:小麦(麺生地)、卵(麺生地)。羊肉アレルギーがある場合は牛肉で代用可。


ソース照合メモ

要素現地語・カザフ語ソース英語ソース日本語ソース判定
羊肉または牛肉(骨つき)kjsilkroad.com(羊・牛)doca-tours.com(ラム・ビーフ)、sweetescapekitchen.com(ラム)kjsilkroad.com、elinesaglik.obunko.com(馬または羊)◎必須(馬肉は地域・機会により/平日家庭は羊か牛が多い)
幅広の手打ち麺elinesaglik.obunko.com(ラザニア状の幅広麺)doca-tours.com(flat noodles)elinesaglik.obunko.com◎必須
ソルパ(煮汁)をかけるelinesaglik.obunko.com(ソルパ)doca-tours.com(broth poured over)elinesaglik.obunko.com◎必須
仕上げの玉ねぎ(スープで蒸らす)kjsilkroad.comsweetescapekitchen.comkjsilkroad.com◎必須
黒胡椒kjsilkroad.com複数ソース共通kjsilkroad.com◎必須
月桂樹の葉kjsilkroad.comsweetescapekitchen.com◎必須
馬肉のカズィ(馬腸ソーセージ)doca-tours.com(記述あり)doca-tours.com△地域・祝祭オプション(平日家庭では省略が多い)

この料理を成立させる核

  • 肉を大きな塊のままゆでる。細かく切ってから煮ない。煮上がってから手でほぐすか、大きめに切り分ける。
  • 麺は手打ち・手延べで幅広(3〜5cm幅)に切る。市販のパスタや細麺で代替すると別物になる。薄く伸ばしてから茹でることで、もちっとした独特の食感が生まれる。
  • 麺をゆでる湯は肉の煮汁そのもの。水で茹でない。これにより麺に脂と旨みが移る。
  • 仕上げの玉ねぎを熱い煮汁で蒸らして皿にのせる。炒めない。生でもない。煮汁をかけてくったりさせた状態で肉の上にのせる。
  • ソルパ(煮汁)を別椀または同じ皿に注いで供する。料理は汁に浮かせて食べる。

作り方

  1. 鍋に肉と水を入れて強火にかける。沸騰直前にアクをすくい取る。
  2. 玉ねぎ(皮つき可)、黒胡椒ホール、月桂樹の葉、塩を加え、弱火で1時間30分〜2時間煮る。肉が骨からほぐれる手前まで。
  3. 肉を取り出し、食べやすい大きめの塊(5〜7cm程度)に切り分けるか、手でほぐす。スープは濾しておく。
  4. 【麺を作る】粉に塩・卵・水を加えてこねる。表面がなめらかになるまで10分ほど。ラップで包んで30分休ませる。
  5. 生地を薄く(2〜3mm)伸ばし、幅4cm、長さ10cm程度の四角形に切る。
  6. 肉を煮たスープを再び沸かし、麺を入れて3〜5分茹でる。麺をすくって皿に並べる。
  7. 【仕上げの玉ねぎ】薄切り玉ねぎに熱いスープを少量かけ、2〜3分おいてしんなりさせる。黒胡椒を振る。
  8. 麺の上に肉をのせ、玉ねぎをかぶせる。煮汁をひとすくい全体に注ぐ。残りのスープは椀または小鉢に別添えする。

食べ方

皿を中央に置き、全員で取り分ける。スープの椀を手に持ちながら、麺と肉を交互に食べる。一口ごとにスープを飲む。塩加減はスープで調整する。パンは出ないことが多い。


補足

失敗しやすいポイント

  • 麺を水で茹でると風味が著しく落ちる。必ず肉のスープで茹でること。
  • 麺が厚すぎると生っぽくなる。2〜3mmを目安に。

代用提案の風味差

  • 手打ち麺の代わりに**餃子の皮(厚め)**を幅広に切って代用可。食感はやや薄くなるが雰囲気は近い。
  • 手打ち麺の代わりに**ラザニアシート(乾燥)**を半分に折って茹でる方法もある。弾力は出るが、表面のなめらかさが異なる。
  • 羊肉が入手できない場合、牛すね肉または牛バラ肉で代用できる。コクは出るが羊特有の脂の香りはなくなる。

時短バージョン

  • 肉を圧力鍋で30〜40分加圧すると時間を短縮できる。スープの透明度は下がるが味はほぼ同等。

翌日の楽しみ方

  • 残ったスープに翌朝、残り麺と少量の塩を足して温め直すと、脂が馴染んで別の味になる。スープが固まって表面に白い脂が浮いている状態が正常。
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同じ場所でも、毎回違う家族・違う偶然・違う料理になります。

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