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- 国:スウェーデン王国 - 地域:ストックホルム(ソーデルマルム地区周辺、旧市街から南に渡った島) - 気候・地形:北欧大陸性気候。バルト海と複数の湖に挟まれた島嶼群の上に建つ都市。冬は日照が4〜5時間、夏は白夜に近い。年間を通じて気温の振れ幅が大きく、根菜・保存食・乳製品への依存度が高い。 - 暮らしの基本:高層ではなく5〜7階建ての集合住宅(アパートメント)が主流。区の多くは19世紀末〜20世紀初頭の建築。週に一度の大型スーパー買い物、金曜のロースミドという家族での夕食習慣(タコスが多い)、木曜はエルタースッパ(エンドウ豆スープ)という日替わり定食文化が残る。 ---
マリアトルイェット広場を背にして、あなたは坂を下りる。 石畳ではない。アスファルトが砂状にひびわれ、端に茶色い雪解けの跡が残っている。四月の朝で、気温は三度か四度。あなたの呼気は白い。上着の内側に湿気が貼りつく。 並木の枝はまだ葉をつけていない。枝の先端だけが、わずかに黄緑の粒を持ち始めている。その下をトラムが通り過ぎ、架線が細かく震える。金属の摩擦音が三秒ほど続いて、消える。 スーパー「ICA」の自動ドアが開いて、男が一人出てくる。紙袋の上からパスタの箱の角が突き出ている。男はそれを押し込もうとして、あきらめて脇に抱え直す。袋の底が少し歪んでいる。 あなたが立ち止まった角に、六階建てのアパートがある。外壁は黄土色のしっくい。窓枠は白く塗られていて、三階のベランダに自転車が一台、逆さに立てかけてある。 そのアパートの一階のインターホンを、あなたは押す。 エリック・ルンドベリ、四十二歳。市の水道局に勤めている。妻のアンニカは育児休暇中で、十ヶ月の息子がいる。昨日の市場で彼の妻とキャベツをめぐって会話し、余った夕飯を食べていくかと言われた。そのときの話だった。 ドアが開く。廊下に灰色のリノリウム床。左壁に自転車のヘルメットが三つ、フックにかかっている。エリックは羊毛のカーディガンを着ている。色は深緑。ジッパーが半分だけ上がっている。靴を脱ぐ場所を目で示される。 室内の温度は高い。二十二度はある。スウェーデンの集合住宅は地域熱供給で暖房が入る。窓の内側に結露がうっすら出ている。 リビングと台所はひと続きになっている。白木のフローリング、白い壁。テレビ台の上にIKEAのフレームが四つ並んでいる。写真と、子供の超音波写真が一枚。家具は少ない。ソファが一脚、ローテーブルが一台、それだけ。 台所から音が聞こえる。鍋の中で何かが沸騰している。低い音で、波打つように繰り返している。 アンニカが棚から平皿を出す。磁器の白い皿。縁だけ薄いグレーのライン。赤ちゃんはハイチェアに座って、木製のスプーンをテーブルに打ちつけている。スプーンが落ちる。拾い上げる。また落とす。 エリックが鍋のふたを取る。白い蒸気が一度に天井方向へ流れる。あなたのいる場所まで、温かく湿った空気が届く。それとともに、脂の溶けた匂いと、黒コショウの刺激が混ざって来る。 鍋の中を横から見る。濃い茶色のスープ。表面に細かい油の輪が浮いている。固形物が沈んでいる。肉と、何か白いもの。 エリックがトングで別の鍋から何かを皿に盛る。白いつぶつぶ。ゆでた芋だと、形と色でわかる。崩れかけている。 テーブルに皿が三枚並ぶ。スープ皿と、芋の皿と、小さな器に入った暗赤色のもの。リンゴンベリーのジャムと思ったが、もっと粒が粗い。 エリックがスウェーデン語で何か言って、椅子を引いてくれる。 あなたは座る。 窓の外でまたトラムが通る。架線の音。ガラスが微かに振動する。 皿の上に立つ湯気が斜めに流れ、消える。 ---
今日のふらりごはん

料理名

Köttbullar med brunsås / ミートボールのブラウンソース煮

この料理について

ケットゥッラル(köttbullar)はスウェーデンの家庭で週に一度は食卓に上がると言われる日常食。特別な日ではなく、普通の平日の夕飯として、茹でポテトとリンゴンベリーと一緒に出される。観光向けのスウェーデン料理のイメージと、実際に家庭で作られているものは大きく変わらない。

材料(4人分)

食材分量日本での入手備考
合い挽き肉(豚多め、豚7牛3)500gスーパー全般現地では豚100%または豚牛混合が多い
玉ねぎ1個(中)スーパー全般みじん切り
1個スーパー全般
生パン粉大さじ3スーパー全般牛乳大さじ3で湿らせる
牛乳大さじ3(タネ用)+ 100ml(ソース用)スーパー全般
小さじ1
白コショウ小さじ1/2スーパー全般黒コショウ代用可だが風味がやや変わる
オールスパイス(パウダー)小さじ1/4KALDIや富澤商店これが本場の香りの核。省かないこと
バター大さじ2(焼き用)+ 大さじ2(ソース用)スーパー全般マーガリン不可
薄力粉大さじ2(ソース用)スーパー全般
牛肉または鶏肉のブイヨン(液体)300mlスーパー全般(固形キューブ溶かして可)
生クリーム(乳脂肪35%以上)100mlスーパー全般
醤油小さじ1スーパー全般スウェーデンでは"soja"として少量加える家庭が多い。隠し味程度
リンゴンベリージャム大さじ4(添え用)IKEA食料品コーナー、KALDIIKEA販売の「SYLT LINGON」が最も入手しやすい
茹でポテト(メークイン推奨)4〜5個(中)スーパー全般皮ごと茹でて食卓で皮をむく方式が現地流

アレルゲン:小麦・卵・乳製品・大豆(醤油)

ソース照合メモ

食材スウェーデン語ソース英語ソース日本語ソース判定
豚(または豚牛混合)挽き肉◎(豚が主体)必須
玉ねぎ(みじん切り)必須
必須
パン粉+牛乳必須(タネをやわらかくする核)
オールスパイス◎(強調)△(記載少ない)必須(現地語で強調)
白コショウ必須
バターで焼く必須
ブラウンソース(バター・薄力粉・ブイヨン・生クリーム)必須
醤油(少量)◎(一部ソース)◎(一部)地域固有の隠し味。省いても可だが入れると深み増す
リンゴンベリー添え◎(複数ソースで強調)必須(省くと別の料理になる)
茹でポテト添え必須(セット)

この料理を成立させる核

  • オールスパイスを生地に練り込む:ナツメグやシナモンではない。これがスウェーデンのミートボールを他国のミートボールと分ける最大の要素
  • パン粉を牛乳で湿らせてタネに混ぜる:この工程を省くと食感が固くなる。丁寧に湿らせてから混ぜること
  • バターで表面を焼く:オリーブオイルではなくバター。焼き色と脂の風味がブラウンソースの土台になる
  • ブラウンソース(brunsås)で仕上げる:白いクリームソースではなく、バターと小麦粉を炒めてブイヨンと生クリームで作る褐色のルー系ソース。これが「köttbullar med brunsås」の「brunsås」であり、省くと別の料理になる
  • リンゴンベリーと茹でポテトをセットで出す:この三点セット(ミートボール+ブラウンソース+リンゴンベリー+茹でポテト)が一皿として成立する

作り方

  1. 玉ねぎを炒める:玉ねぎをみじん切りにし、バター少量(分量外)で中火で5分、透明になるまで炒める。冷ます。
  2. パン粉を湿らせる:ボウルにパン粉と牛乳(大さじ3)を合わせ、指で押さえながら5分置く。
  3. タネを作る:挽き肉、炒めた玉ねぎ、湿らせたパン粉、卵、塩、白コショウ、オールスパイスをボウルに入れ、粘りが出るまで手でよく混ぜる。冷蔵庫で15分休ませる。
  4. 丸める:直径2〜3センチの球に丸める。手を水で湿らせると表面がきれいにまとまる。(約25〜30個できる)
  5. 焼く:フライパンにバター(大さじ2)を中火で溶かし、ミートボールを入れる。転がしながら全面に焼き色をつける(約8〜10分)。中心まで火が通ったことを確認する(内部温度70℃以上)。焼き上がったミートボールを皿に取り出す。
  6. ブラウンソースを作る:同じフライパンにバター(大さじ2)を足し、薄力粉(大さじ2)を加えて中火で1〜2分炒める。茶色くなり始めたらブイヨン(300ml)を少しずつ加えながらダマにならないよう混ぜる。生クリーム(100ml)と牛乳(100ml)を加え、弱火で5分煮る。醤油(小さじ1)を加えて味を整える。
  7. 合わせる:ミートボールをソースに戻し入れ、弱火で3〜4分煮て馴染ませる。
  8. ポテトを茹でる:メークインを皮ごと塩水から茹でる。竹串がすっと入ったら完成(約20〜25分)。食卓で皮をむいて食べる。

食べ方

平皿に茹でポテトとミートボール(ソースをたっぷりかけて)を並べ、リンゴンベリージャムを脇に添える。一口ミートボールを食べるごとに、リンゴンベリーをちょっとつけながら食べるのが家庭流。パンは出ないことが多い。

補足

  • 失敗しやすいポイント:タネを混ぜすぎると固くなる。「粘りが出たら止める」。また、焼くときに触りすぎると崩れる。最初の2分は動かさない。
  • ブラウンソースのダマ対策:ブイヨンは熱いものを少しずつ加える。一度に入れるとダマになる。
  • リンゴンベリーの代用:クランベリーソース(加糖少なめのもの)で代用可。甘みがやや強くなるが近い役割を果たす。コケモモのジャムがあればさらに近い。
  • オールスパイスが手に入らない場合:ナツメグ少量+シナモン少量+クローブ少量で近似できるが、風味は変わる。省いた場合は「スウェーデン風」ではなく「ただの肉団子」になる。
  • 時短バージョン:市販のデミグラスソースにブイヨンと生クリームを足してブラウンソース代わりにする方法があるが、甘みが出るので醤油を増やして調整する。
  • 翌日の楽しみ方:ソースが肉に染み込んでさらにまとまった味になる。パスタと和えるか、ライ麦パンに挟んでサンドイッチにする家庭もある。
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